【メキシコ市・庭田学】ブラジル北東部コスタドサウイペで開かれていた中南米・カリブ海諸国33カ国による初の首脳会議は17日、「米国抜き」で政治・経済の地域統合を目指す方針を確認し閉幕した。次回は2010年にメキシコで開催予定で、欧州連合(EU)に匹敵するような地域統合のための新たな国際機構「ラテンアメリカ・カリブ連合(仮称)」の発足を目指す。
21世紀に入り顕著になった中南米諸国の左傾化と、経済成長に伴う民族主義意識の強化が、米国と距離を置き、キューバ参加による新国際機構設立方針につながった格好だ。
アメリカ大陸では、キューバを除く34カ国による米州自由貿易地域(FTAA)構想があったが、米国の主導にブラジルやベネズエラなどが反発し、05年に頓挫。今後、米国との自由貿易協定(FTA)は各国が2国間で進め、広域自由貿易圏構想も当面、「米国抜き」で推進されそうだ。
社会主義国キューバのラウル・カストロ国家評議会議長が出席した今回の首脳会議では、キューバに対する米国の経済封鎖の解除を強く求める特別宣言も採択。AP通信によると、ボリビアの左派、モラレス大統領からは「オバマ次期米政権がキューバ経済封鎖をやめないのならば、我々は米国大使を強制退去させるべきだ」との強硬な提案も飛び出した。
これに対し、ブラジルの中道左派、ルラ大統領は「オバマ政権の誕生を待たなければならない。私は米国の対ラテンアメリカ政策が変わると期待している」と指摘。米国がかつて「裏庭」とした中南米に対し、オバマ新政権がどのような姿勢で臨むかも今後の焦点になりそうだ。
次回会議が予定される2010年は、メキシコやチリなどの独立200周年にあたる。開催予定国メキシコのカルデロン大統領は「『ラテンアメリカ・カリブ連合』発足とともに我々の独立200周年を祝うことに大きな価値がある」と述べ、米国を除く新機構に期待感を示した。
ラテンアメリカでは南米12カ国による南米諸国連合(UNASUR)が今年5月に発足するなど、地域統合の機運が高まっている。
毎日新聞 2008年12月18日 19時30分