連載 山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」:IdeaPadは“新しい流れ”になる (2/2)Netbbokであることを明確に伝えなければならない──レノボ・ジャパンにとって、日本のコンシューマーPC市場にはどのような魅力があるのでしょうか。 原田 日本でコンシューマーPC市場に参入するためには、日本のコンシューマーユーザーの製品に求める要求レベルがきわめて高いことを理解していなければなりません。このことはレノボ・ジャパンのメンバーは全員知っています。すでに日本以外のレノボではコンシューマーPC市場に参入していてそこで成功もしていますから、日本でも参入する以上は失敗はできません。 参入して確実に勝てる市場は、現在、Netbookであり、IdeaPad S10eなら自信を持って投入できるいうことです。実際、ここまで伸びているカテゴリはNetbook以外にありません。レノボ・ジャパンで、日本のコンシューマーPC市場に参入するために模索していた段階でもポジティブな意見が多かったです。現時点がNetbook市場の最初の段階であるとして、これから一般ユーザーに浸透していく中で、この勢いがいったいどこまで続くのか、この先、この市場が拡大するのか縮小するのかという議論をして、最終的にノートPC市場の25%はNetbookが確保し続けるのではないかという結論に達しました。 PCは、家庭に1台の時代から1人1台の時代になろうとしています。ただ、Netbookが従来の省スペースデスクトップを代替えするノートPCに取って代わるかというとそうは思えません。両者では使いかたも異なります。やはりNetbookでは、メインに使うPCとして扱うノートPCとしては十分ではないのです。何か別にメインのPCがあって、NetbookはそのサブPCの過ぎないはずです。この関係が変わることは、今後もないでしょうね。 ボディサイズが小さくてどこでも持っていけるため、それで何でもこなせるように錯覚してしまいそうになります。でも、動画を編集するといった重い作業をしたりするのはつらいはずです。やはり、Netbookは基本的に2台目のPCですね。 今後、さらにNetbookの市場が伸びたときに、PCと携帯電話、もしくはスマートフォンの間にくる存在として位置付けられるのではないでしょうか。PCからユーザーを奪うというよりは、スマートフォンからPCに誘導するイメージですね。携帯電話のユーザーからすれば、キーボードが使えて液晶ディスプレイのサイズが大きいNetbookの使い勝手はPCに近いので、新たにできることも多いはずです。ネットワークのインフラと接続環境が整えば、携帯電話で十分と考えていたユーザー層が、きっとNetbookに移ってくるでしょう。
日本向けのIdeaPad S10eで導入されたQuickStartはLinuxベースで動くラウンチャーで、電源投入後10秒でWebブラウザやメディアプレーヤーが使用可能になる。携帯電話から移行するユーザーにはWindowsより親和性が高いかもしれない(写真=左)。日本の店頭におけるPOPイメージ(写真=右)。量販店を中心に販売していくほか、修理引き取り後4〜5営業日以内の返却といったサポートメニューの充実など、日本のコンシューマー市場に最適化された体制を整えた上でレノボ・ジャパンは参入したという
携帯電話→IdeaPad S10e→ThinkPad……ではない──PCを1人で複数持ってもらうようなマーケティングにNetbookを結びつけることはできませんか。 原田 まだ、PCが1人2台となっていませんからね。1台目として自分のメインPCを持つことが前提で、それを浸透させるのが先決です。とにかく、PC自体をもっと浸透させないと無理でしょう。 それよりも、Netbookから入ってThinkPadに移行するというユーザーも取り入れていきたいと考えています。今のレノボ・ジャパンがまったくリーチしていないユーザー層に使ってもらいたいということですね。 おそらく、このようなユーザー層が、家庭で使っているPCはきっとThinkPadでないように思います。でも、買い換えというときに次はThinkPadを選んでもらう、あるいは、ThinkPad以外に用意するレノボ製品をどれか選んでもらうということです。そのためには、プレミアムPCとしてフルスペックを搭載したIdeaPadを用意しておく必要があるでしょう。 ──ということは、レノボ・ジャパンのコンシューマー向けの製品シリーズとして、ThinkPadとは別にIdeaPadシリーズが始動するということですか。 原田 そうです。日本のコンシューマーPC市場では基本的にIdeaPadのラインアップを充実させる予定でいます。ただ、懸念もあります。IdeaPad S10eを普通のノートPCと同じように考えて購入してしまったユーザーがNetbookの限界に嫌気を差して、レノボというメーカーそのものを嫌いになってしまう可能性があるわけです。だからこそ、そうならないように、ベンダーとしてきちんとNetbookというカテゴリーをコンシューマーユーザーにも理解してもらえるようなメッセージを発信しなければなりません。フルスペックのPCとIdeaPad S10eは違うものであって、NetbookであるIdeaPad S10eはメインのPCには絶対になりえないことを強く訴えます。使っているのがNetbookだけという状況では、確実に不満を感じるようになるはずですから。 Netbookの売れ行きは勢いがありますから、量販店も注力していますね。でも、これで全部できるというセールストークはしていないはずです。そんなことをしたら、量販店もユーザーをだますことになってしまいます。 ThinkPadは、もともとリテールでも販売していましたし、今でも、根強く買ってくださる個人ユーザーがいます。それ以外にも、SOHO需要の店頭買いがありますね。店頭で実物を見て触ってもらうこともThinkPadでは行っています。ただ、ThinkPadはあくまでも法人向けで、コンシューマーに向けたマーケティング戦略を持たせるわけではありません。メインはThinkPadであるが、新しくできた別の流れの中でコンシューマー領域を育てていきます。ただし、コアな部分のテクノロジーはレノボの製品としては重要な部分ですから、技術の出し惜しみは絶対にしません。 ──ThinkPadとIdeaPadは別の流れということは、ThinkPad版のNetbookというのもありえるのでしょうか。 原田 もちろん、出さないというわけではありません。法人向けのニーズで考えたときに、出る可能性はゼロではありません。 携帯以上でノートPC未満。Netbookの立ち位置はそこにある。Netbookの取材をすると、どこのベンダーも必ず「これですべてができると思ってもらっては困る」という。フルブラウザといいながら、ちっともフルじゃない携帯電話のブラウザの不便に気がつくユーザーが出てくるのが早いか、それとも、そのフルブラウザやスマートフォンに最適化されたコンテンツが充実するのが早いか。ネットブックの市場が定着するかどうかは、そのタイミングにかかっている。 どっちにしても、Netbookの登場は、パーソナルコンピューティングの退化を促進する。その退化を、どのようにして進化と演出するのか。レノボ・ジャパンのコンシューマー市場に対する戦略はそこにあるのだと思う。 関連記事
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