東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

双方のケア 運用に課題 少年審判 あすから 被害者傍聴開始

2008年12月14日 朝刊

被害者らの傍聴席(左奥)が新設された東京家裁の少年審判法廷=東京・霞が関で

写真

 重大事件の被害者や家族に、原則非公開だった少年審判の傍聴を認める改正少年法が十五日、施行される。被害者席を新たに設けるなど準備に追われる家裁関係者。加害少年と被害者らが狭い法廷に同席することになるため、双方への心身の負担をいかに減らすのか、運用のあり方が試される。

 改正法施行に先立ち最高裁家庭局は審判が混乱しないよう、加害少年と被害者らの対面は避けるよう求めた。

 東京家裁では約三十−五十平方メートルの三法廷に被害者らの席を新設。被害者らは、裁判官に向き合うように座る加害少年から、少年鑑別所職員や学校関係者、保護司らを間に挟んで後方に座る。

 入廷の際は、加害少年が最初に入り、被害者らは後に続く。持ち物は事前にロッカーに預ける。「被害者らと加害少年の衝突が予測される場合などは職員を増やすこともある」(同家裁)という。

 十一月に全国の裁判長が集まった会議で新しい審判のイメージが話し合われ、遺影の持ち込みについては「認めていい」との意見が多数あったという。

 二〇〇〇年、金目当ての行きずりの中学生らに長男を殺された神奈川県内の母親(78)は当時、少年の名前や殺害理由も分からずじまいだった。「事件直後に審判で加害者と向き合うのは耐えられるかと心配はあるけど、遺族だったら悲しみに打ちのめされているより、加害者のことを知りたい」と新たな制度を評価する。

 「真実を知りたい」と願う被害者らの思いに応えて、傍聴は殺人や傷害致死、傷害などの重大事件ではほぼ認める方針だ。しかし、少年事件の多くは友人、先輩後輩、家族の中で起きているという事情もある。「制度の趣旨は理解するが、傍聴が難しいと判断されるケースも出てくるのではないか」とある家裁関係者はみている。

 <少年審判の傍聴> 改正少年法に盛り込まれた。加害少年が12歳以上で殺人や強盗致死傷、危険運転致死など被害者を死傷させた事件に限定。少年に心理的圧迫を与えないよう家裁は少年の付添人の弁護士から意見を聴いた上で傍聴の可否を個別に判断するが、審判への影響が懸念されない限り原則認める方針。対象事件は年間350−500件と想定。傍聴人にも不安や緊張を和らげるために、弁護士らの付き添いが認められる。

 

この記事を印刷する