被爆者援護法改正論議を引き起こした寝たきりの韓国人女性、鄭南寿(チョンナムス)さん(88)=釜山市=は16日、鄭さんに代わって支援者らが被爆者健康手帳交付を在釜山日本総領事館に申請したことを聞くと、病床で「早く手帳を見せて」と喜んだ。
鄭さんは約10年前から寝たきり状態で、釜山市から車で約2時間の「陜川(ハプチョン)高麗病院」に入院中。鄭さんの長男の姜碩鍾(カンソクジョン)さん(69)と、在外被爆者支援連絡会の平野伸人共同代表(61)らが午後、手帳申請の報告に病院を訪れた。
鄭さんは「1カ月前よりさらに衰弱している」(許万貞(ホマンジョン)韓国原爆被害者協会釜山支部長)といい、耳がほとんど聞こえず座ることもできない。ベッドに横たわりながら姜さんから報告を受けると「(手帳の)配給はまだなの?」と、弱々しく応えた。
同病院に入院し、鄭さんの隣のベッドにいた卞光珠(ビョングァンス)さん(75)も被爆者で、手帳を受けられなかった一人。来日要件撤廃について「本当に皆さんのおかげです」と鄭さんらに話しかけた。
平野さんは鄭さんの手を握りながら「今まで『いつになったらもらえるの』と厳しく言われた。来日要件撤廃からは、強く握り返してくれるんですよ」と感慨深げだった。【釜山・錦織祐一】
〔長崎版〕
毎日新聞 2008年12月17日 地方版