韓国料理の楽しみは、テーブルに所狭しと並ぶ「パンチャン」にもある。小皿に盛られた副菜のことだ。キムチ一つとっても白菜、キュウリ、エゴマの葉と見ているだけでうれしくなる。お代わり自由。地方によっては、どれが主菜か分からないほどの皿数となる。
ソウル中心部の食堂でのこと。知人が「あれを見て」と指をさす。店員がいったん客に出したものの、手つかずの餅菓子を棚にしまっていた。別の店で同じ光景を見たことがある。その時はキムチだった。
使い回し。当時は「まあそんなものか」と思ったが、ソウルの瑞草区などは今、食べ残し再利用禁止運動を展開中だ。
そして政府も動いた。保健福祉家族省が公表した食品衛生法改正案は、再利用で摘発された店は営業停止1カ月、2度目は3カ月、3度目で店舗閉鎖処分となる。
だが、裏を返せばそれほど横行していたということか。顔見知りの食堂のアジュンマ(おばさん)は「使いたくてもそれはできないよ」。だが、区役所によると「この不景気なのに……」という不満が飲食店から漏れてくるという。
日本でも産地偽装や長年の使い回しが発覚し、廃業に至った高級料亭があった。「刺し身のつまは絶対食べない」という人も知っている。
食品衛生法の改正は来年上半期を予定。パンチャンも皿数や量が減ったり、個別料金がかかったりする日が来るのだろうか。食いしん坊は何とも複雑な気分になる。【西脇真一】
毎日新聞 2008年12月14日 東京朝刊
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