2008年、スマートフォンとして大ヒットを飛ばしたアップルの「iPhone 3G」。でも、スマートフォンの歴史としては「Windows Mobile」のほうが先。実際のところ、どっちがより便利なの? ということで、「iPhone 3G」とWindows Mobile搭載の最新機種「Touch Diamond」を例にあげ、よく使う基本機能ごとにそれぞれの長所/短所をわかりやすく解説します。
スマートフォンでもっとも便利かつよく使われる機能は、やはりインターネットブラウジングだろう。大型の液晶画面を備え、フルブラウザを搭載するスマートフォンは、「iモード」や「EZWEB」などの携帯電話向けのインターネットサービスとは違い、パソコンと同じインターネットサイトを利用することができるのが特徴だ(iモードやEZWEBなどの携帯電話向けコンテンツは利用できない)。サイト閲覧はもちろんのこと、検索や掲示板などへの書き込み、ネットショッピングなど、パソコンと同じようにインターネットを使えるのはかなり便利。これさえあればノートPCを持ち歩かなくてもすむくらいだ。
Touch Diamond(右)の液晶は2.8インチ、対するiPhone 3G(左)の液晶は3.5インチ。大きさではiPhone 3Gのほうが大きいが、解像度はTouch Diamondが640×480ドット(iPhone 3Gは480×320ドット)で、一画面に表示できる情報は多い。
同じスマートフォンでも搭載するインターネットブラウザは異なる。Windows Mobile機は、基本ブラウザとして「Internet Explorer Mobile」を搭載。このほか、高性能な「Opera Mobile」などが搭載されるケースもある。対するiPhone 3Gは、アップル独自の「Safari」を搭載。どちらも、パソコン用のサイトを閲覧できるフルブラウザで、タッチパネルによる操作性も同様だ。
製品名 | 通信キャリア | 最大通信速度 |
---|---|---|
Touch Diamond S21HT | EMOBILE | 7.2Mbps |
Touch Diamond HT-02A | NTTドコモ | 7.2Mbps |
Touch Diamond X-04HT | ソフトバンク | 3.6Mbps |
iPhone 3G | ソフトバンク | 3.6Mbps |
インターネットの通信速度は携帯電話のキャリアによって異なるが、Touch Diamondを販売しているEMOBILEやNTTドコモの場合、最大で7.2Mbpsの高速通信が可能。これに対し、iPhone 3Gを販売するソフトバンクのHSDPA規格は最大でも3.6Mbps。高速通信が可能な通信キャリアを自由に選べるのもWindows Mobileの大きなメリットといえるだろう。
Touch DiamondもiPhone 3G双方とも加速度センサーを搭載しており、インターネットブラウジング時に横向きに本体を傾けると、ブラウザもそれに伴って横に広い表示に変化する。状況に応じて見やすい画面にサッと切り替えられるのは便利だ。
どちらも大型のタッチパネル液晶とフルブラウザ機能を持っており、Windows MobileとiPhone 3Gの使いやすさはほぼ互角といえる。ただし、一画面に表示できる情報量の多さと通信速度の速さでは、EMOBILEの「Touch Diamond」がやや有利だ。
スマートフォンがインターネットブラウジングと並んで得意とするのが、メール機能であろう。携帯電話用のメールと違い、スマートフォンではふだん使用しているパソコン用のメールアドレスがそのまま使用できるため、汎用性が広い。また、Webメールなどのサービスも利用可能だ。複数のメールアカウント登録もできるので、仕事用、プライベート用と切り替えながらスマートにメールを送受信できる。
Windows Mobileは、パソコン用のメールソフトとしてもおなじみの「Outlook」のモバイル版「Outlook Mobile」を標準装備する。使い勝手はPC版のOutlookと同じなので、Outlookの使い方に慣れている人ならすぐに使いこなせるはずだ。メールアカウントも複数登録でき、パソコンとのデータ連携も行える。
iPhone 3Gが搭載するメール機能「Eメール(i)」。注意したいのは、受信と同時にメッセージをダウンロードするタイプのいわゆるプッシュ型のメールソフトではなく、Webサーバー上にあるメッセージを確認に行くタイプのアプリである点。見た目の使い勝手はあまり変わらないが、本体内にメッセージをダウンロードできない点は注意したい。
(※記事初出時に、誤解を招く表現がありましたので、一部内容を訂正しました 12/8)
Touch DiamondもiPhone 3Gも、文章の入力は、タッチパネル上に表示されるソフトウェアキーボードを使用する。使い勝手はどちらもほぼ互角。日本語の変換精度もそれほど大きく異なるわけではない。なお、Windows Mobile搭載のスマートフォンの中には本格的なQWERTYキーボードを搭載する製品も存在する。キーボード搭載製品は、メールの入力もスムーズに行えるので便利だ。
大きく差が出るのがパソコンとの連係機能である。パソコン用のWindowsOSやOfficeアプリと互換性のあるWindows Mobileの場合、USB経由でパソコンと接続し、同期ソフト「Windows Mobile デバイスセンター」を使うことで、パソコンと、Windows Mobile間でのさまざまなデータの同期が取れる。パソコンで受信したOutlookのメールをそのままスマートフォンに同期できる「ActiveSync」もかなり便利。iPhone 3Gも「iTunes」経由でのデータのやり取りはできるが、こうした細かなデータ連携までは行えない。
メール機能においては、パソコンと同じOutlookが使用できるWindows Mobile機に大きなアドバンテージがあるといえる。複数のメールアドレスを使えるのはどちらも同じだが、サーバー上にメッセージを見に行く方式のiPhone 3Gは、いざというときに使いづらい。文字入力についても、本格的QWERTYキーボードを搭載した製品が用意されているWindows Mobileに使いやすさでは軍配が上がるだろう。
「音楽再生」「画像撮影/再生」「映像撮影/再生」などのメディアプレーヤー機能は、一般の携帯電話でも搭載されているため、特に目新しさは感じないかもしれないが、パソコンとの連動性に関しては、スマートフォンのほうが便利であろう。人気の携帯プレーヤー「iPod」をベースに作られた「iPhone 3G」のエンターテインメント機能は言わずもがなであるが、Windows PCと同等の機能を搭載したWindows Mobile機も、実はなかなかに高性能だ。
大人気の携帯プレーヤー「iPod Touch」と同等の機能を持つiPhone 3Gのメディアプレーヤー機能はまさに強力! iPod Touchで行える操作はほぼすべて行え、タッチパネルによる独自の操作感も同様だ。3.5インチの大型液晶は見やすく、スマートフォンであることを忘れさせるようなエンターテインメント性を持っている。
Windows Mobile搭載のスマートフォンが標準で搭載する「Windows Media Player Mobile」。Windows PCをお使いの方にはおなじみのプレーヤーであろう。スマートフォン用にカスタマイズされてはいるが基本操作はまったく同じ。ファイルの同期もWindows Media Player上から行えるので、ふだんパソコンでWindows Media Playerを使っている人には便利だ。
iphone 3G | 音楽 | AAC、MP3、MP3 VBR、Audible、Apple Lossless、AIFF、WAV |
---|---|---|
映像 | H.264、MPEG-4 | |
画像 | JPEG、GIF、TIFF | |
Windows Mobile(Windows Media Player Mobile) | 音楽 | WMA、MP3、MID、AMR、AAC |
映像 | WMV、ASF、H.263、H.264、AVI、MP4 | |
画像 | BMP、JPEG、GIF、PNG |
iPhone 3GもWindows Mobileも対応フォーマットは非常に多く、どちらを使ってもさほどの不満はない。ただし、Windows PCで標準フォーマットとなっているビデオファイル「WMV」への正式対応はiPhone 3Gでは行われていない。
iPhone 3Gにパソコンからファイルを転送する場合には「iTunes」を使う。「iTunes」は、アップルのMacシリーズ標準のメディアプレーヤーであるだけでなく、iPod専用の同期ソフトウェアともなっているため、Windows PCのユーザーでも利用している人は多い。楽曲データベースが非常に充実しているほか、専用のオンラインストア「iTunes Music Store」も充実の内容だ。データ同期もiPhone 3GをUSBケーブルでつなぐだけで起動するなど操作の簡単さも光る。
Windows Mobile機は、Windows標準のWindows Media Playerを使ってファイルを転送する。iTunesのような自動同期も行えるが、iPhone 3Gほど多くのメモリーを搭載していないWindows Mobile機の場合は、再生したいファイルだけをドラッグ&ドロップで転送させる方法が一般的だろう。ふだんWindows Media Playerでファイル管理や再生を行っている場合は便利だ。
メディアプレーヤーとしての使い勝手や楽しさという点では、さすがにiPodをベースにした「iPhone 3G」にかなうものはない。搭載するメモリーも8GB/16GBと大容量で、全ファイルを同期しても余裕がある。この点は明らかにiPhone 3Gの圧勝。ただし、対応フォーマットの多さや、Windows PCとの連携ということで考えると、Windows Mobileのほうがやや優勢ともいえる。機能的にはほぼ互角であるが、プレーヤーとしての使い勝手ではiPhone 3Gに軍配があがりそうだ。
スマートフォンは、どちらかというと「インターネット端末」と考えられているが、もちろん音声通話を行うための「電話」でもある。では、電話として使う場合の使いやすさはどうなのだろうか。意外と知られていない2者の使い勝手をチェックした。
これについては、Windows MobileとiPhone 3Gのどちらがいいとも言い切れない。音声通話の品質は、利用する通信キャリアの回線品質に大きく左右されるからだ。
ただし、Windows Mobileのほうはキャリア選択の自由があるため、キャリアによる通信品質に左右されづらいというメリットがある。iPhone 3Gの場合、キャリアはソフトバンク固定となってしまうが、Windows Mobileなら、今回例に挙げている「Touch Diamond」だけでも、EMOBILEとソフトバンク、NTTドコモ(1月発売予定)から発売されるため、auを除く3キャリアから好きなものを選べる。今自分が使っている携帯電話キャリアから乗り換える必要がないのも大きなメリットといえるだろう。
電話をかける場合によく使われるアドレス帳だが、この管理方法は2者の間で大きく異なっている。
Windows Mobile機は、パソコンで使っている「Outlook」のアドレス帳をそのままデータ同期できるため、パソコンのOutlookでアドレス帳を管理しているのであれば、そのままWindows Mobileにアドレス帳を転送・同期できる。もちろん、アドレス帳に表示される電話番号から、ワンタッチで通話することも可能。実際に使ってみるとかなり実用的な機能ということに気がつくはずだ。iPhone 3Gも「iTunes」経由で「Outlook」のアドレスを取り込めるため、同様の使い方ができる。
(※記事初出時に、iPhone 3GではOutlookとのアドレス帳連携が行えないと記載しておりましたが、こちらは誤りです。訂正してお詫び申し上げます)
通話品質では両者の間にさほどの差はないが、通信キャリアを選べる点はWindows Mobileのほうが若干有利だ。
最後にスマートフォンの機能を拡張できるソフトウェアについても触れておこう。一般の携帯電話でもさまざまなアプリをダウンロードして使うことができるが、その用途はあくまでも限定的。この点スマートフォンは、パソコンと同様にソフトを自由にインストールして使えるため、機能拡張が行いやすく、ソフトの内容もさまざま用意されている。特に、Windows PCとの強力な連携が行えるWindows Mobileではこの傾向が顕著だ。
Windows Mobileでは、Word、Excel、PowerPointなど、日常的に使用するOfficeドキュメントを表示・編集できる「Office Mobile」を標準搭載している。仕事などで使うファイルを外出先で開いて確認できる「ビューワー」は一般の携帯電話にも搭載されていることがあるが、ファイルを見るだけでなく編集まで行えるというのは、Office Mobileの大きなアドバンテージだ。
iPhone 3GもWindows Mobileも、ソリティアなどいくつかのミニゲームを標準で搭載しているほか、ゲームなどのソフトをダウンロードして使用することができる。iPhone 3Gの場合、専用ソフトをダウンロードできる「APP Store」でアプリをダウンロードすることが可能。まだ数は多くないが、搭載するタッチパネルと加速度センサーを使用した体感ゲームなどが今後多くリリースされそうな感じだ。
一方のWindows Mobileも、Windowsベースで作成されたアプリケーションが豊富に用意されている点ではiPhone以上。開発プラットフォームがWindowsの共通のため、フリーソフトがインターネット上で数多く公開されている。
今年発売されたばかりのiPhone 3Gも徐々に対応ソフトが増えつつあるが、歴史の長いWindows Mobileのほうが、蓄積という点ではより多くのアドバンテージがある。Officeドキュメントの連携が行えるOffice Mobileが標準搭載されるのも、大きなポイントであろう。
以上、Windows Mobile機とiPhone 3Gとで、主要な機能をそれぞれ比較してみた。大まかに見れば、Windows Mobileはどちらかといえば「実用的」、iPhone 3Gはどちらかといえば「エンターテインメント的」であるが、スマートフォンとしての主要機能はいずれも十分に備えているといえる。
ただ、トータルで見た場合には、やはりWindows Mobileのほうが高機能。パソコンとの連携機能やメール機能などは、iPhone 3Gよりもはるかに強力で実用的。販売されているモデルが多く、キャリアを自由に選べるというアドバンテージも大きい。iPhone 3Gは、iPodそのままの強力なメディアプレーヤー機能が光るが、メモリー容量の差こそあれ、同様の機能はWindows Mobileにも搭載されており、大きな差はないといえる。
iPhone 3Gが得意とするタッチパネル操作も、Windows Mobileの最新モデル「Touch Diamond」ではそのほとんどが実現されており、操作性についてもほぼ互角のレベルに近づいているといえそうだ。
PART2では、話題のWindows Mobile搭載スマートフォン「Touch Diamond」について、もう少し詳しく各機能などを見ていくことにしよう。