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制服組優位に疑問符 田母神論文で文民統制揺らぎ '08/12/10

 【解説】制服組の権限強化を打ち出した防衛省改革の「基本的考え方」(基本方針)は、首相官邸に設置された防衛省改革有識者会議の七月の報告書に基づいて作成された。だが報告書はシビリアンコントロール(文民統制)が機能しているとの前提に立っており、田母神俊雄前航空幕僚長の論文問題で文民統制の揺らぎが指摘される中、制服組優位の改革案の妥当性には疑問符を付けざるを得ない。

 基本方針によると、防衛省設置法と防衛省組織令が規定する「自衛隊の行動の基本に関する」事項を運用企画局から統合幕僚監部に移す。これにより武器使用基準など自衛隊行動の立案や、ほかの府省や与野党幹部との調整、米国や国連との協議で、制服組が主導権を握ることが予想される。

 「業務の重複を合理化するため運用企画局は廃止」とした有識者会議の報告書は「防衛省・自衛隊は文民統制を重視している」「自衛隊は文民統制を内面化した」と、文民統制の定着を評価する内容となっている。

 田母神問題が起きて以降、防衛省内局では「前提そのものが誤っていたのに、このまま組織再編が国会の理解を得られるのか」「唯一の武力組織である自衛隊の運用を制服組に任せていいのか」(背広組幹部)との声も上がったが、流れを変えるに至っていない。関連法案が二〇一〇年の通常国会に提出された場合、慎重な審議が不可欠だ。




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