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【神奈川】

「横浜みどり税」 条例案可決 個人 年900円/法人 27万―4500円

2008年12月11日

 緑保全のため、市民や法人に新税を課す横浜市の「横浜みどり税」条例案が十日、市議会常任委員会で審査され、賛成多数で可決された。十二日の市議会本会議で可決、成立する見通し。負担額は個人年間九百円、法人年間四千五百円−二十七万円で、来年度から五年間徴収される。 (中山高志、藤浪繁雄)

 委員会では自民、民主、公明、民主党ヨコハマ会の各会派が「緑の減少に歯止めをかけるべきだ」などと賛成を表明した。

 これに対し、無所属クラブと共産が「市民への周知徹底が不十分」と反対を示し、挙手採決により賛成多数となった。

 一方、「行政改革を推進し、事務事業の徹底した見直しを行う」「緑拡充施策を推進するため、ほかの財源確保に取り組む」など六項目の付帯意見も付けた。

 ただ、賛成に回った委員からも「深刻な不況の中、市民に過分な負担をかけるのはいかがか」などの声も聞かれ、新税に対する反発の根強さをうかがわせた。

◆「増税」への過程に疑問

<解説>

 議論百出の末、横浜市議会常任委員会で可決された「横浜みどり税」条例案。月七十五円の市民負担で緑を守るという政策自体は理解できる。だが、不況下における増税の是非について、市民の生の声に丁寧に向き合った上での決定だったのか。疑問は尽きない。

 市が十月から十一月にかけ実施した「市民意識調査」の方式は自由記述型。税負担の可否や負担額など詳しい設問を設けた八月の選択式調査に比べ、大ざっぱなものだった。

 経済状況が悪化した十月に「増税」について正面から賛否を問えば「反対」が増えることは確実。しかし、市民が新たな負担に敏感な時期だからこそ、賛否をもっと謙虚に見極めるべきだった。

 関係者によると、市側は一時、個人負担額を二年間に限り五百円以下とする考えを非公式に議会側に示したという。これは立ち消えたが、税額を半分以下にしてまで新税案提出を図る市側の姿勢は、「増税ありきでは」との不信感を生んだ。

 また、中田宏市長自身が、新税の説明会などで説明役を務めたことは一度もなかった。選挙公約で掲げた重要施策だけに、説明会場などで市民に直接理解を求めるべきではなかったか。こうした疑問に市長から納得いく回答はなかった。

 中田市長は「(新税)導入が間違っていたかどうか、来年にも市民意識調査で聞きたい」と政策の正当性に自信を示す。それならば、結果だけでなく導入に至る過程の妥当性や自身の姿勢についても、しっかり市民の評価を聞くべきだ。 (中山高志)

 

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