「苦渋の決断だった」「まだまだ市民への周知が足りない」--。横浜市が緑の保全のために来年度からの導入を目指していた「横浜みどり税」条例案を賛成多数で可決した12日の市議会本会議。付帯意見を付けた上に、採決では賛成に回った自民、民主、公明、民主党ヨコハマ会の一部会派からも直前の討論で、否定的な発言が相次ぐ異例の展開となった。
「まさか賛成の立場で討論するとはゆめゆめ思わなかった」。自民の鈴木太郎議員はこう口火を切った。
鈴木議員は、市民への周知方法や経済情勢への配慮、新税に財源を頼る手法の3点について「まだまだ議論の余地がある」と厳しく批判。新税を財源とする「横浜みどりアップ計画」について「実行することに一刻の猶予もない」とした上で「新税導入に必要なプロセスと政策実行のスピードの間で格闘した」と述べた。付帯意見に関しては「必ず履行されるものと信じている。特に中田(宏)市長には十分ご認識していただきたい」と語気を強めた。最後には「市議会は市長に負けていてはいけない」と声を上げる場面もあった。
民主の松本敏議員も同様にみどりアップ計画に賛同しながらも「市民の意見を十分に反映した議論がされたのか課題が多くある」と苦言を呈し、付帯意見について「確実に進められるよう申し述べておきます」と中田市長をけん制した。
また賛成会派は議会改革に触れ「この厳しい経済状況で市民に負担をお願いするのであれば議会も覚悟を決めなければならない」と訴え、議員定数の削減を今後提案する方針を明らかにした。【野口由紀】
条例案を可決した市議会本会議後、中田宏市長は記者団の取材に対し、条例案の提案については主要会派の団長の了解を得ていたと明らかにした。
中田市長は「私は今議会に上程せず、次回の議会や来年の議会など含めて柔軟性をもって意見交換をした」と述べた上で、「今議会で議論すべきだろうという意向を各団長から示された。そして議論に付していこうと私が最終的に決断した」と話した。
また中田市長は、追加提案を巡り「手法に疑問が残る」と指摘した毎日新聞の解説記事に対し反論。「各党との話し合いで、追加議案にすることで『(予備日に)一日日にちをとって議論を本会議でやることの方が重要である』となった経緯がある」と追加提案の意義を強調した。
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■ことば
横浜市が緑の保全の財源として来年度から5年間導入する新税。個人は年900円、法人は年間均等割額の9%(4500~27万円)相当額を、市民税均等割に上乗せする。市民税非課税の個人には適用されず、赤字法人は当初2年間免除される。税収見通しは年24億円で、使途を明確にするため基金と特別会計を設置する方針。相続で保有が困難になった樹林地の買い上げ事業(年10・3億円)などに充てられる。
毎日新聞 2008年12月13日 地方版