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たばこ増税見送り…首相正念場 新たな財源探しを指示
麻生太郎首相は11日、首相官邸に自民党の保利耕輔政調会長を呼び、社会保障費の伸びを2200億円抑制する政府方針に対し、抑制額を圧縮するための財源確保を指示した。首相はたばこ税増税で穴埋めする方針だったが、与党が増税見送りを決めたことで新たな財源探しが必要になった。続いて与謝野馨経済財政担当相も呼び、税財政改革の中期プログラムに景気回復を踏まえた3年後の消費税率引き上げを反映させるべく与党と調整するよう指示したが、新たな財源探しでつまずけば政権運営に大きなダメージとなりそうだ。
首相は保利氏に、社会保障費の抑制は「限界に来ている」と強調し、「たばこ税増税が仮にだめになったら、他の財源の確保のために政調会長として対応してもらいたい」と述べた。
社会保障費の抑制は、平成21年度予算概算要求基準(シーリング)で決められているが、首相は後期高齢者医療費の負担増や医師不足などを背景に社会保障に対する国民の不満が広がる中、「新たな安定財源」で圧縮する方策を模索していた。そこで、たばこ税を1本あたり3円引き上げることで約1000億円を確保し、残りを雇用保険の国庫負担分の削減でまかなう案を軸に進めてきた。
だが、たばこ税については、自民党の税制調査会や農林関係議員らが「たばこ税は社会保障の特定財源ではない」(幹部)などと主張し、公明党も反対姿勢をみせたことで、見送られることになった。
首相の指示を受けて、保利氏は与党内の調整に入ったが、新たな財源の確保は容易ではない。
財務省の杉本和行事務次官は11日の記者会見で「具体的な方策の中身は厚生労働省を中心に検討してもらう必要がある」と、厚労省が主体となって歳出の削減が財源の確保を進めるべきと立場を鮮明にした。
一方、厚労省の江利川毅事務次官は同日の記者会見で「大変厳しい情勢だが、なお安定財源を探して2200億円を圧縮できないかという道を考える」と、道路特定財源などからの充当に期待感を示した。同時に「大局的な判断があるかもしれない」とも述べ、シーリングの見直しもあり得るとの見方を示した。
道路財源の活用は公明党からもあがっているが、道路関係議員らの反発が予想される。「埋蔵金」の切り崩しも「安定財源」とは言いがたく、3日に閣議決定した「予算編成の基本方針」に反するとの批判も出かねない。