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【コラム】

筆洗

2008年12月11日

 経営者たちは転換期に何を思い、何を考え、何を発見したのか。経営評論家の片山修さんの著書『人を動かすリーダーの言葉』のテーマである▼一九九五年から十一年間にインタビューした百十三人の経営者が登場している。「失われた十年」といわれた時代を乗り切った自信が随所にうかがえる。影響力の大きい経営者の言葉を、インタビュー時の肩書で紹介しよう▼トヨタ自動車の奥田碩(ひろし)会長。<今、流行の「リストラすれば企業の競争力が上がる」という主張には、二つの重要なポイントが欠落しているといえます。その一つは、「人間尊重」。すなわち、あらゆる経済活動の中心にあるのは人間だという素朴な信念です>▼キヤノンの御手洗冨士夫社長。<初代社長に就任した御手洗毅は、従業員が安心して幸せに暮らせる会社をつくりたいという思いで経営しました。今日まで、この理念をずっと通してきましたが、何の不都合もありません>▼シャープの町田勝彦社長。<人を辞めさせない、何としても雇用を守ってみせるという強い意志を、経営の歯止めとして明確にしておくことです。安易な人員削減に流れてしまったら、経営に対しても甘くなってしまう>▼三氏の経営理念は近いのだろう。新たな転換期に突入した今こそ声高に唱え、実行していく時である。「今回は違う」では、情けない。

 

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