2008年12月10日

破産の陸王「預かりバイク」の行方


陸王店舗前に残されたリムジン(12月8日)

 札幌市や石狩市で自動車教習所を運営する安全相互グループの中核企業「愛育安全相互自動車学校」(札幌市・安田克昭社長)が、グループ企業のバイク販売会社「陸王」とともに、札幌地裁に対して自己破産を申し立てたのは12月3日のことだ。


店内に人の気配は感じられない(同日)

 ネット掲示板には、自動車学校が事業を停止し、陸王が「臨時休業」に入った11月22日以降、早い段階から「安全相互に前払いした受講料はどうなるのか」「陸王に預けているバイクは返ってくるのか」といった債権者の悲痛な声が溢れていた。

 北方ジャーナル1月号(12月15日発売)では、記事執筆時点で地裁が破産手続きの開始決定を下していない流動的な状況を鑑みて、主に陸王の「冬季保管バイク」に焦点を当てて、同社のサービスを利用していたライダーたちが不安を覚える理由を追っている。

 記事中では、道路運送車両法の適用を受けながらも「登録制」ではなく「届出制」となっているバイクを含む軽自動車では、車両本体と証書、キーの一式が悪意ある者に渡ると、いとも簡単に名義変更や転売などができてしまう可能性に触れ、これは法律・行政手続き上の不備ではないかと指摘した。

 もちろん、多くのライダーの信頼を集めた陸王でそのような事態が発生するという前提ではなく、これはあくまでも一般論に過ぎない。だが、債務者側の説明責任軽視によって情報が極端に不足するなかで、感情を鬱積させたライダーを含む債権者が「最悪のケース」を想定してしまうのも、また無理からぬことだ。

 2社の経営陣が姿を消したまま事業停止、破産申立と進む過程で、債権者からの質問などに答えるべき存在は同社代理人で破産申立人でもある前田尚一弁護士だろうが、同弁護士がメディア取材はもちろん、債権者からの問い合わせにも基本的に応じない姿勢を示していることも、混乱に拍車をかけているように思える。


受講生に送付された11月27日付け「御報告」の一部

 前田弁護士名で自動車学校の受講生に送付された11月27日付けの「御報告」なる文書では、破産申請のための膨大な作業を理由に電話での相談には応じないとし、ファクスでの問い合わせにも「現時点で対処可能な範囲で相応の対応を検討させて頂こうと考えております」と事実上、よほどの事情がなければ回答しないことを明言している。

 これでは債権者の不安が募るのも当然だ。電話やファクスがダメなら直接会うしかないと出向けば、「面談を強要するなど常軌を逸するような行動をとられる方がある場合は、直ちに110番通報する考え」なのだという。

 裁判所が破産手続きの開始を決定し、破産管財人を選定するまでは、代理人は債務者側の当事者に他ならない。こうした文言が「御報告」に記載されること自体が、債権者の不安を煽っていることに債務者は気付くべきだ。混乱の沈静化を図りたいと考えるなら、まず説明責任を果たすことではないか。(ひ)


Posted by Hoppo Journal at 11:38│Comments(0)ニュース
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