店に入ってくるなり、連れてる女性に、こうのたまう。
「この店はね、店主が自ら牛を見極め、仕入れてくるんだよ。」
「ま、ここらで都会レベルの牛肉を扱ってるのは珍しいからね。」
おそらくサイトを見てのご来店だろう。誉めてくれてるらしいけど、なんかやな感じ。“都会レベルの牛肉”って、なんだよ、それは?
僕がいるのに気付いたらしい。
「あ、店主。オーダーカットお願いできる?」
「はあ、どんなご要望で?」
応対はするけど、イキナリやってきて「やってくれて当然」みたいなの、ちょっと困るんだよね。こっちだってダンドリ組んで他の作業やってるんだし、アポとってくれたらありがたいんだけど。そりゃ頼まれたらやるけど。
「そだねー、ウワミスジと、トモサンカクと、カイノミ、いいの入ってる?」
わしゃ鮨屋のおやじか?
「トモサンカクってのはラムイチの一部でね…」(←連れの女性に向かって)
うぷぷー、どこで聞きかじったんか知らんけど、間違ごうとるぞ、君?トモサンカクはマル(シンタマ)の一部じゃ。女性の前で恥じかかすのもナニだから言わんかったケド。
「ありますけど、整形するのに少し時間かかりますよ。」
「いいよ、いいよ。オーダーカットだもん。」
「で、どのぐらいずつお入り用ですか?」
「そーね、二人だから、 120gずつもあればいいっかぁ?」
ちょ待てよ。ほんの 120gずつのために、わざわざ部分肉を整形すれば、残った部分はどうなるよ?ナマモノだから、肉塊に一度包丁を入れると使い切らなきゃロス出まくりやんけー。 つうか120gって、細かっ。(笑。)
「かくかくしかじかで、この 10kg以上の肉塊から、ええとこどりで120gずつ抜かれたら、後始末ができんのですよ。ごめんなさい。」
「焼肉屋さんとか、一人前ずつ注文できるじゃないですか?」
「はい、例えば、お寿司屋さんならスナズリだのエンガワだの、在庫がある部位は注文できますよね?でも、お魚屋さんでハギの肝だけ、とか鯛の頬肉だけ、とかイキナリ希少部位を少量ずつ注文されてもナカナカ対応できませんやん?」
「なんだ、無理なのかー。」
できるか、わずか 120gずつで。“焼肉屋さんならできる”んなら素直に焼肉屋さんに行けばいいのに。(^^;)
「申し訳ないっす。前もってご予約いただければ、なんとかできるでしょうけどね。残った部位のさばき先をダンドリして、熟成を調節して…。」
「じゃあ、いい。いらない。」
「予算を言うていただければ、“お任せ”でええとこ見繕いますけど?」
「僕はウワミスジと、トモサンカクと、カイノミが欲しかったのっ!」
キレやがった。ガキんちょが駄々こねとるみたい。(笑。)時々おるんよねー、こーゆー困ったちゃんが。わしゃ最初っから、その奇妙な田舎訛りのヘナヘナした東京弁が気色悪かったんじゃー。地方出身者がなりきろうとしてる言葉じゃ、それは。無理矢理関西弁を使う関東人と同じ不自然なフレーバーを感じるぞ。( >正統派東京弁や江戸っ子言葉は決して嫌いじゃないけど。)
僕は聞き逃さなかったぞ。「へ、言うほどじゃないよねー、ここ。やっぱ東京じゃないと…。」という捨て台詞。
僕よー、おぢさんは大人だから取り立てて怒らないけど、そーゆー態度は改めたほうがええぞ?鮨屋や割烹でプロの料理人相手に中途半端な“知ったかぶり”でエエかっこしようとするとロクなことにならないから。そんで、後で笑われる。「あいつアホやなー。」って。
…ということを教えてやらんわ、お前なんかに。わははー、ずーっとそうやって陰でバカにされとればええんじゃ。(←ささやかな反抗。)
帰った後、ヨメと顔見合わせて、ぷぷーって吹き出してもうたがな。ちょっとイラっとしたけど、ま、日記のネタにもなったし、おもしろかったから、ええか?半年の一度ぐらいなら、来店を許す。できれば新ネタでヨロシク。(爆。) |