従業員が増えるのを当て込んで建設中のマンション。関係者からは「入居者が確保できるかどうか」という声も漏れる=大分県国東市
大分県と全国、九州・沖縄の有効求人倍率の推移
キヤノンの子会社、大分キヤノン(大分県国東市)が踏み切った1千人規模の請負・派遣ら非正社員の削減は地域の経済を一気に冷え込ませようとしている。大企業の工場が相次いで進出し、「雇用の優等生」だった大分県にも戸惑いが広がる。(野崎健太、神庭亮介、竹下隆一郎)
■怒る暇なく次の職探し
「怒っている暇もない。そんなことより職探し」
国東市にある大分キヤノンの工場で、約1年前からデジタルカメラの組み立てをしている20代の男性。11月に請負会社から雇用契約の中途解約を予告された。年内に従業員マンションから出なければならない。
手取り十数万円で貯金もわずか。解約予告以来、1日の食事はコンビニエンスストアのおにぎり2個だけでがまんする。引っ越し代と就職活動中の生活費を確保するためだ。
工場近くのワンルームマンションでひとり暮らしの40代の請負会社員は「驚きはありません」と話す。これまで大手自動車メーカーの工場などを転々としてきた。企業の生産縮小は「当たり前」と思うようになった。今回の削減は対象外だが、いつ「契約解除」を言い渡されてもおかしくない。
請負の所属会社はさまざまで、仲のいい友だちもできない。唯一の楽しみは休みの日に近くの大分空港まで飛行機を見に行くことだ。
大分工場(大分市)の女性従業員(28)はデジカメの検品などをしてきた。請負会社の解雇に納得できず、上司に食い下がると、上司は言い放った。「オレだって、この先どうなるか分からない。みんな大変なんだ」
国東工場から数百メートル離れたコンビニは1日800〜900人の客の8割がキヤノン従業員だ。男性店長は「知った顔が1人2人といなくなった」と不安げだ。もともとキヤノンの従業員を当てにして開店しただけに、「年が明けてガランと人がいなくなったらどうすればいいのか」。