県が保健医療計画で打ち出した「総合周産期母子医療センター」の設置先が、宙に浮いている。計画には国立病院機構佐賀病院(佐賀市日の出)に設置する予定を掲げたものの、ここに来て国が設置条件を厳しくする動きを見せ、麻酔医不在の同病院では要件を満たさなくなったからだ。一方、県は12年度に佐賀市嘉瀬町に移転する県立病院好生館に同センターの機能を付加する準備も進めており、落ち着き先はまだ決まりそうにない。【上田泰嗣】
同センターは最高レベルの産科医療を行い、高リスクの妊婦や新生児治療に対応する。国が都道府県に各1カ所以上の整備を求めており、未設置なのは佐賀、山形県だけ。県は12年度までに設置する計画を立てていた。
佐賀病院は県の計画に従って11月から新病棟の建設に着手。センターの設置要件に合わせ、09年12月には新生児用と母体・胎児用それぞれの集中治療室(ICU)を整備する予定だった。
しかし今年10月、センターに指定されている都立病院で、脳出血の妊婦の受け入れが拒否され、女性が死亡する問題が発生。
舛添要一厚労相は、センターの指定要件に救急部門の設置を加える意向を表明したが、これが県医療界に波紋を広げた。
12月4日夜に開かれた県医師会の産科救急緊急会議で、佐賀病院の島正義院長は「県の方針に従って進めているので戸惑っている」と発言。
会議後、県の十時忠秀・医療統括監も「麻酔医もいない状況では無理。今の佐賀病院では認可されないだろう」と断言。さらに「新県立病院では、センター機能を設置できる余裕を持って設計していく」と述べた。
センターを複数個所に設ける可能性も示したもので、現時点でどこにセンターを落ち着かせるかは未定だ。
県内の高度な産科医療は従来、未熟児などを受け入れる佐賀病院を中心に、妊婦治療に当たる佐賀大病院(佐賀市鍋島)、小児科を中心とする県立病院好生館(同市水ケ江)--の3病院が分担するシステムを取っていた。
胎児や新生児の死亡率は05年には全国で最も低く、07年も6位だった。
文部科学省が5日発表した国立大病院の新生児集中治療室(NICU)整備で、佐賀大病院には09年4月、6床が設けられることになった。
県内のNICUは現在、新生児医療の中核を担う国立病院機構佐賀病院に9床あるだけ。同病院は総合周産期母子医療センター設置を目指して09年12月にはNICUを12床にする計画を進めている。佐大病院を合わせると県内は18床になる。
NICUは新生児1000人に3床が望ましいとされ、年間7000件台ある県内の必要数は21床。
毎日新聞 2008年12月9日 地方版