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【集う】ハイパーソニックが拓いた未来を祝う会(21日、東京都千代田区のグランドアーク半蔵門)
記念講演の大広間には、ボルネオ島の熱帯雨林の鳥の声が流れていた。それに演者の声が重なるが、まったく邪魔にはならない。それどころか、落ち着きと快ささえ感じられる。
壇上の主役は、国際科学振興財団理事の大橋力さん。大橋さんには研究者のほかに、芸術家としてもうひとつの顔があり、その場合は、芸能山城組主宰者の山城祥二さんとなる。
約250人が駆けつけたこの日の会は、大橋さんらの「ハイパーソニック・エフェクト」に関する研究論文が世界の脳科学者の注目を集め続けていることを祝って開かれた。耳には聞こえない20キロヘルツ以上の高周波音が人間の脳深部に作用して、心身を活性化させるという効果の発見だ。
熱帯雨林の環境音や、インドネシア・バリ島の青銅打楽器オーケストラの「ガムラン」の音曲、合唱「ケチャ」歌声に、この高周波音の成分が豊富に含まれているという。
大橋さんは、分子遺伝学や脳科学、コンピューター科学などを総合して「情報環境学」を構築した。そして研究と芸能活動を通じて実践していった。科学技術と文化芸術の融合だ。
その異色の研究の真価が近年、国内でも広く認識されつつある。その証明が、祝宴の顔ぶれだ。産官学や文化界で第一線に立つ人たちがやってきた。
理化学研究所脳科学総合研究センター特別顧問の甘利俊一さん、詩人の辻井喬さん、日本モノづくり学会長の常磐文克さん、国際日本文化研究センター教授の安田喜憲さん、岩波書店社長の山口昭男さん、と数えればいくらでも続く。
大橋さんは不可思議な能力を持っているようだ。多分野の研究に通じ、異分野の人々を引きつける。
「仲間に恵まれたから、応援してくれる素晴らしい人たちがいたから、ここまでこられました」
最後は、ハイパーソニックに満ち満ちたガムランの演奏とケチャの合唱で宴を閉じた。(長辻象平)