当たり前のように所得が増え、周囲が結婚をおぜん立てしてくれる時代が終わったら、結婚に踏み切れない大勢の未婚者が残った。最後まで一人で生きようと腹をくくるべきか、それとも結婚に向けて努力すべきか……。「おひとりさま」「婚活」という新語で時代を読み解く2人が、迷う男女に人生指南する。【國枝すみれ、中川紗矢子】
未曽有の結婚難時代なんです。若者の4人に1人は一生結婚しないと予想されています。事実、日本の未婚率(05年統計)は30代前半で男性の47%、女性の32%。30代後半を見ても男性の30%、女性の18%が結婚していない。結婚したいのに、結婚できない男女が多いことが問題です。
婚活とは男女が結婚を目的とした出会いを探して積極的に活動すること。合コンに参加するとか、結婚情報サービス会社に登録することです。就職には就活が必要なように、結婚には婚活(結婚活動)が必要な時代です。なのに多くの日本人は「結婚は自然にできる」と思いこんでいる。実際は昔も自然な結婚は少なかった。昔は見合い結婚。60年代半ばを境に恋愛結婚のほうが多くなるが、それでも職縁結婚が多かった。会社にお嫁さん候補の若い女性が事務職としていたため、会社と家を往復していても結婚できたわけです。つまり社内集団見合い結婚。ところが80年代以降に恋愛市場が自由化され、誰かが世話をしてくれるというシステムが崩壊した。さらに就職氷河期で花嫁候補の採用もなくなりました。
団塊ジュニアは不況に直撃され、30歳までに何度も転職するなど自分の面倒をみるだけで精いっぱい。「男性に養ってもらいたい」と考える女性の結婚は難しくなる一方です。
婚活の利点の一つは子どもが持てること。日本では結婚しないと出産しにくいので、少子化が進む。婚外子が半数以上のフランスとは事情が違います。少子化の原因の一つは未婚化なので、児童手当などの子育て支援だけでは子どもの数はなかなか増えないでしょう。
また、結婚して共働きの場合は両輪経済なので、失業や病気のときに経済不安に陥るリスクを回避しやすい。
早くに「おひとりさま」を決意して経済基盤や人間関係のネットワークを整えた人は問題ない。問題なのは「いずれは結婚するだろう」と思っている男女なんです。ずるずると「結婚待ち」をしている間に資産の形成が遅れる。特に男性は結婚しないとなかなか貯金ができない。
日本人は元来、恋愛能力が高くない。20代では「恋愛はめんどくさい」という恋愛低体温症が増えている。人間関係のストレスに弱く、結婚して親族関係のストレスが増えることを嫌がる。男性はコミュニケーション能力が低く、うたれ弱い。女性は傷つきやすい男性の面倒をみるのがめんどくさい。
こうした男女は自分の希望や欲望を相手に伝えてすり合わせる作業ができません。「結婚したいの? 遊びなの?」と聞くこともせず、お互い見合っているうちになんとなく別れるケースが多い。
日本の男性は、自己主張して「すり合わせ」を要求する西欧女性と交際すると、鍛えられるかもしれません。女性には「王子様は待っていても永遠にこない。結婚したい人は受け身で待っていてもだめ。狩りに出よ」と言いたい。
毎日新聞 2008年12月8日 東京夕刊