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言いたい! 「おひとりさま」か「婚活」か(2/2ページ)

 ◇「一人」もライフスタイル--上野千鶴子さん(東京大学大学院教授)

 結婚が永久就職である時代も、経済的依存を可能にする時代もとっくに終わっているのに、なんで今時、「婚活」なんていう古い話が出てくるんでしょうね。結婚というものにインセンティブ(意欲を引き出す刺激)がそれだけなくなったということですから、無理にすることはないんですよ。

 結婚は生活していくための「生活保障財」から「ぜいたく品」に変わりました。だから求める条件が上がったのです。そうなれば、当然マーケットは縮小し、マッチメーキングが難しくなる。それで8割以上が結婚願望を持つにもかかわらず、結婚に踏み切らない人が増えたというわけです。

 でも、どうってことはない。すべての男女が父や母になる人口爆発時代が終わったと思えばいいのです。明治時代を迎える前は、人口の2割程度が生涯非婚者でした。

 シングルライフの「おひとりさま」に、不利益はありません。かつては公団住宅に入居できないとか融資を受けられないなどの社会的差別がありましたが、それもなくなってきています。これまでは常時セックスできるパートナーがいないということが不利益と見られていましたが、近年はセックスと結婚が分離しましたから、何の問題もなくなりました。男性シングルも、コンビニのお陰で、家事能力が低くてもシングルライフは可能で、生きやすくなりました。

 誰が、何のために、婚活を促進したいと思っているんでしょう? 国が少子化を防ぐためなら、シングルでも安心して産み、子育てができる環境を整備してほしいものです。

 女性の晩婚、非婚が進んだのは、経済力があるか、さもなければ親にパラサイトできるからです。将来、親の資産が転がり込むと期待しているから、資産を形成する動機もない。親も「自立せよ」とは言わない。

 かつてのように結婚が生活保障財になると、家庭は逃げられない強制収容所になります。DV(家庭内暴力)と依存が待っているだけ。実際DVは若年層でも少しも減っていません。それならば、介護を引き受けて親にパラサイトしている方がマシでしょう。結婚離婚の自由がある社会は、そうでない社会よりもはるかによい社会です。結婚の安定性がものすごく低下しているのに、婚活を唱えるのは、時代錯誤ですね。

 婚姻率は日本の工業化と同時に上昇しました。40歳になる前に一度でも結婚したことがある累積婚姻率は60年代にピークを迎え、男性97%、女性98%でした。「国民皆婚社会」で、男性はコミュニケーション能力がなくても結婚してセックスする相手を確保できた。でもコミュニケーションがないセックスは買春や強姦(ごうかん)と変わりません。

 人はどっちみちおひとりさまになります。遅いか早いかの違いだけ。一人でいることを基本にすればいいのです。おひとりさまはライフスタイルの一つ。家族として過ごす時間は人生のある一時期にすぎません。

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 ◇「特集ワイド」へご意見、ご感想を

t.yukan@mbx.mainichi.co.jp

ファクス03・3212・0279

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 ■人物略歴

 ◇しらかわ・とうこ

 1961年東京都生まれ。女性問題に詳しく、社会学者の山田昌弘氏と共著で「『婚活』時代」を執筆、婚活という言葉を広く認知させた。著書に「『キャリモテ』の時代」など。

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 ■人物略歴

 ◇うえの・ちづこ

 1948年富山県生まれ。女性学、ジェンダー研究のパイオニア。「おひとりさまの老後」はベストセラーに。11月発売の「おひとりさまマガジン」を責任編集した。

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毎日新聞 2008年12月8日 東京夕刊

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