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食育:食べ残し減少 調理員との交流や給食時間延長も

 子どもにとって給食は学校の楽しみの一つ。でも、苦手なメニューを食べ残したなど後味の悪い思い出を持つ人もいる。学校給食法は今年、栄養重視から食育中心に切り替える改正が行われた。施行は来年4月からだが、学校、親子は食べ残しという悩ましい問題に依然、直面している。【大和田香織】

 多様な取り組みで食べ残しを減らすことに成功した学校がある。福岡市立南当仁小学校だ。毎月の給食の展示の際に食材の手触りやにおいも児童に体験させ、魚など不人気の献立の日は、調理員が教室に出向いて食べることの意味合いを説明している。調理員の山野みよ子さん(59)は「街で子どもに声をかけられるなど顔の見える関係ができた」と話す。感想を書いて投函(とうかん)する「食育ポスト」も設けており、児童との意思疎通に細心の注意が払われている。

 今年度は「食べる時間」を確保した。以前は配膳(はいぜん)や片づけを含め給食時間が約40分しかなく、食べ終われば順番に外遊びに出ていた。これを50分に延長し、食後も決まった時刻まで外に出ず、読書など教室で過ごすよう改めた。

 効果は徐々に表れ、8年前7%だった残さい率はいま0・1%だ。村本繁校長は「いろんな取り組みが総合的に作用した」と語る。

 ●無理強いで「恐怖症」

 兵庫県宝塚市の女性(36)は小3の長女の「給食恐怖症」で悩んできた。きっかけは保育所時代、無理に食べて吐いたこと。自宅以外で食べるのが苦手になり、心療内科にも通った。一時おさまったが昨年、担任の教員に「残さず食べようね」と言われ「恐怖症」が復活。担任の理解で元に戻ったが、今年代わった担任に長女の悩みが十分理解されていない。「給食当番の日は『また吐いたら……』と長女が緊張する。家では何でもよく食べるので、気長に見守るつもりです」。時間をかけて解決を目指している。

 ●量、内容に問題

 一方、食べ残しの根本原因が制度や提供方法にあるとの見方もある。

 山梨県の女性(48)は昨年、中2の長男が通う公立中の給食試食会で驚いた。民間業者から届く弁当の量は運動部の男子が基準。普通の生徒には多めで「全部食べないほうがいい」と説明された。時間割の都合で盛り付ける余裕がなく、弁当が配達されていることや、搬送・衛生上の理由で揚げ物が一度冷やされ生徒に不評なことも知った。「少量サイズや給食を利用しない選択肢もあればいいのに」。そう考えている。

 ◇食文化伝える努力を

 学校給食は文部科学省が栄養摂取基準を定めている。例えば、牛乳はカルシウム不足を背景に「使用に配慮する」とされ、小1から中3まで一律200CCつく。東京都内の公立中の栄養士で全国学校給食を考える会の五十嵐興子会長(60)は「飲みきれない子もいるはず。もう少し現場に裁量を委ねても良いと思う」と語る。

 ただ、給食はさまざまな食材、味を子どもに伝える役割も担う。調理は工夫し、ひじきの煮付けなど子どもに不人気の料理は食べ残しを覚悟で出している。興味を持てるように食材や産地の説明や展示もしている。生産や調理をどこでどんな人が担っているのか、食習慣が暮らしにどう影響するか、日々の積み重ねで実感しないと浸透しにくいからだ。食べ残しは、食文化にかかわる問題を伝える大人の努力が手薄だったためだと、五十嵐さんは考えている。

 勤務先の中学で試食会に参加する保護者は1割に過ぎない。五十嵐さんは「調理を校外に委託することの是非、予算が限られていることなど課題は多い。保護者も一緒に考えてほしい」と訴える。

毎日新聞 2008年12月7日 東京朝刊

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