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ホンダ:F1撤退 苦渋の決断、「社のDNA」失う 人材、省エネ車開発に

 ◇不振響く

 ホンダは5日、自動車レースの最高峰「F1」から、今シーズン限りで撤退すると正式に発表した。ホンダにとってF1は、創業者の本田宗一郎氏の強い意向で始まった重要な事業。「うちのDNA」(福井威夫社長)と位置づけてきただけに撤退は苦渋の決断で、世界景気の悪化でダメージを受けている自動車メーカーの苦境がいかに深刻かを物語っている。

 「今でも(F1を)やりたい気持ちは大きいが、状況が許さなかった」。福井社長は5日の会見で時折、言葉を詰まらせた。福井社長自身、ホンダに入社した理由を「レースがやりたいから」と常に話していた。

 しかし、米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻(はたん)した9月以降、世界の自動車市場は急速に悪化。国内各社の収益源である米国では、10月の新車販売台数が前年同月比32%減、11月は同37%減で底が見えない状況だ。

 他の自動車メーカーと同じようにホンダも業績悪化に悩んでおり、10月には09年3月期の連結営業利益見通しを前期比42・3%減と大幅に下方修正。すでに国内外で約14万台を減産し、国内の期間従業員760人を削減すると発表している。

 F1費用は年500億~600億円規模に上り、営業利益の1割にも相当する負担だけに、「F1に注いできた経営資源や人材を新しい分野に振り向けるべきだ」(福井社長)と撤退を決断した。F1マシンの開発に従事する国内の技術者約400人は低燃費車の開発などに回す方針だ。

 ホンダの撤退で、F1に参戦する国内自動車メーカーはトヨタ自動車だけになる。トヨタは5日、「現時点で撤退の予定はない」とコメントしたが、トヨタも09年3月期の連結営業利益を前期比74%減と見込むなど苦しい状況は同じで、今後の動向が注目されそうだ。【宮島寛、森有正】

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 ■ことば

 ◇F1(フォーミュラワン)

 国際自動車連盟(FIA)が主催し、1人乗りで、タイヤが車体からはみ出しているのが特徴の「フォーミュラカー」による世界最高峰の自動車レース。毎年、世界十数カ国を転戦し、各レースごとの順位によって与えられる点数の総計で年間チャンピオンが決まる。08年はホンダやトヨタのほか、伊フェラーリ、独BMW、独ダイムラー、仏ルノーの自動車メーカー6社が参戦。世界17カ国で全18戦が行われ、11チーム22台がチャンピオンシップを争った。

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 ◇トヨタとホンダのF1の取り組み◇

         ホンダ           トヨタ

参入年      1964年         2002年

運営費(推定)  500億~600億円    500億~600億円

運営会社     ホンダGPリミテッド(英) トヨタモータースポーツ(独)

 同従業員数   700人          650人

本社F1担当者  350~400人      200人

総合順位(11チーム中)

08年        9位         5位

07年        8位         6位

06年        4位         6位

毎日新聞 2008年12月6日 東京朝刊

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