大相撲春場所(大阪府立体育会館)11日目は、横綱・朝青龍が大関・栃東に上手投げで快勝。1敗を守る大関・白鵬の背後にピタリとついた。
「栃東が十分な状態でなかったというのもありますけれどね。相撲界の壮大な予定調和(のストーリー)が粛々と進められている感じです」 と、『週刊現代』で八百長疑惑を報じるノンフィクションライターの武田頼政さん。次の焦点は、14日目ごろに行われる白鵬との直接対決だ。ここで白鵬が敗れれば、千秋楽に2敗同士の優勝決定戦になる。一時は絶体絶命に思われた横綱がここまで追い上げれば、大阪府立体育会館もマスメディアの報道も、大いに盛り上がることだろう。 初日、2日目と朝青龍が敗れたときの新聞各紙は、『朝青醜態』(12日、スポーツニッポン)『朝青龍あれれ連敗 「八百長疑惑」払拭のはずが…』(13日、産経新聞)などと遠慮がなく、日ごろ淡々と結果を伝えるだけのことが多い民放テレビニュースも、疑惑の影響に触れていた。「やっぱり八百長がなきゃ勝てないのか」と言わんばかりだった。 それが3日目以降、朝青龍の白星が伸びるにつれ、八百長への言及はトーンダウンしていく。というより、朝青龍についての記事そのものが減る。横綱の貫禄(かんろく)を見せた取り組みであっても、ほかの力士を取り上げる。 そして8日目、朝青龍が倒れた稀勢の里にヒザ蹴(げ)りを入れたシーンについては、再び大きく紙面を割く。要するに、「朝青龍が何かやれば書く」のだ。その雰囲気は、「勝って当たり前の横綱だから」というのとは少し異なる。 武田さんは、 「朝青龍を大きく記事で扱いたくない、という意識は記者間にもともとあった。スポーツ紙でも、一般紙でもね。記者にすれば、こんな八百長試合なんか書いていられるか、という思いです。だから、何か波乱がない限りは、朝青龍は取り上げないんですよ」 と記者間の空気を解説する。 「瞬間湯沸かし器のように怒りっぽい朝青龍に対しては、記者間にかなりの嫌悪感がある。朝青龍がなぜ連勝記録を伸ばしているのかは、みんな以前から知っていたこと。分かっているからこそ書きたくない。『紙面上で朝青龍を無視する』『扱いを小さくする』というのは、彼らにできる抵抗なんでしょう。ごまめの歯ぎしりみたいで、情けない話ではあるが、跳ね返った記事を書いてその後、相撲記事を書きにくくなるのも困るでしょうしね」 『週刊現代』最新号にある記事「貴乃花親方『八百長撲滅クーデター』の全容」では、同誌カメラマンにスポーツ紙記者が近づき、「今後支度部屋に入らないよう」伝えるシーンが描かれている。横綱からの要請として。 朝青龍はどこまで強いのか。周囲は彼の強さにどこまで黙するのか。春場所は残り4日。いよいよ終盤戦である。 【関連記事】 ガチンコで春場所初日から大荒れ!疑惑の朝青龍に土<初日> 朝青龍、連敗スタートで「いきなりがけっぷち」<2日目> 朝青龍、気迫の1勝目で立て直しなるか<3日目> 星戻した朝青龍、焦点は中日あたりか<4日目> 安馬になど負けない!朝青龍3勝へ<5日目> 朝青龍4連勝、だが格下相手に不安材料も<6日目> 朝青龍、明日・稀勢の里戦がカギになるか<7日目> 朝青龍、品ないケリでも優勝争いに名乗り<8日目> 「どうやって勝とうかな、っと」朝青龍ゆるい1勝で星伸ばす<9日目> 朝青龍、真剣勝負でまたも勝つ<10日目> 見えてきたストーリー、千秋楽に決定戦か<11日目> 朝青龍、順調に10勝目_明日の波乱はあるか?<12日目> 今夜がヤマ場だ!携帯飛び交う終盤戦の魅力<13日目> ついに追いついた朝青龍、白鵬への流れを止めるのか<14日目> あっけなかった決定戦、「でもこれこそガチンコだったかも」<千秋楽>
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