大相撲春場所(大阪府立体育会館)2日目は、疑惑の渦中にある横綱・朝青龍が、前頭・雅山相手に寄り倒されて黒星。初日からまさかの2連敗を喫した。
講談社の『週刊現代』が先月から報じている八百長疑惑は、日本相撲協会が講談社および記事を取材・執筆したノンフィクションライターの武田頼政氏に損害賠償を求める民事訴訟に発展している。相撲協会側にしてみれば、訴訟を有利に進めるため、また社会的な疑念を払しょくするために、今場所で朝青龍が勝利することは絶対条件である。 それでなくても、「横綱」が初日から連敗などあり得ない話だ。しかし、テレビ画面に映る横綱の取り組みぶりは素人目にも必死。“今ある力を振り絞った”末の敗北と見えた。 武田さんによると、この日の相手・雅山が属する武蔵川部屋はもともと、八百長にはくみさない力士が多いとされる部屋。 「今回の八百長疑惑報道で、所属力士たちは親方に相当怒られたはずです。それこそ今場所は、『絶対死ぬ気でやってこい』などと言われたでしょう。今日勝った雅山は、本当にうれしそうだった。とてもいい相撲だった。八百長のようなしがらみから抜ければ、強い力士なんですよ、もともと」 「対する朝青龍は、そこまで強い力士ではないことを示してしまった。足がもたついていました。踏み込んでいないんです。勝ちがあらかじめ決まっている試合ではないから、怯(おび)えているんですね。そこを行くのが勝負師なのだけれど、勝負師たり得ていないことを、たった2日間で証明してしまった」 武田さんはこう解説する。 明日3日目の相手は、ガチンコ力士の代表格・普天王である。朝青龍がもっとも苦手とする相手の1人だ。 「明日も負けたら休場、そして引退でしょう。私としては休場せず、土俵に立って、徹底的に負け続けてほしいですが……。稽古(けいこ)をせずに場所に臨むとどうなるのかということを、横綱として証明してほしい」 朝青龍の結びの一番に限らず今場所は、全体に面白くなってきている。テレビでも伝わってくる場内の気迫が違うのだ。 「現場にいるカメラマンから、支度部屋の雰囲気がピリピリしていて、すごく良いと聞いています。下位力士にとっては、今場所は実力本位で勝負できる大きなチャンスですから」 「僕ら(取材班)は、これを望んでいたんです。『相撲で八百長は昔からやっているものだろう』という声も多いけれど、予定調和の試合というのは三文芝居を見るようなもので、緊張感がない。だが、筋書きのない今回は、素人にも違いが分かるほどに面白い。ファンは『筋書きのないドラマ』を見たいということなんです」 ちなみに「場外試合」となる訴訟の方は、第1回口頭弁論が来月5日に近づいている。 被告として臨む武田さんは、次のように語った。 「朝青龍の勝敗が裁判にどう影響するかは分かりませんが、とりあえず(初日からの連敗には)ほっとしましたね。全勝優勝でもしてしまったらどうしようかと思っていましたけれど(笑)」 【関連記事】 ガチンコで春場所初日から大荒れ!疑惑の朝青龍に土<初日> 朝青龍、連敗スタートで「いきなりがけっぷち」<2日目> 朝青龍、気迫の1勝目で立て直しなるか<3日目> 星戻した朝青龍、焦点は中日あたりか<4日目> 安馬になど負けない!朝青龍3勝へ<5日目> 朝青龍4連勝、だが格下相手に不安材料も<6日目> 朝青龍、明日・稀勢の里戦がカギになるか<7日目> 朝青龍、品ないケリでも優勝争いに名乗り<8日目> 「どうやって勝とうかな、っと」朝青龍ゆるい1勝で星伸ばす<9日目> 朝青龍、真剣勝負でまたも勝つ<10日目> 見えてきたストーリー、千秋楽に決定戦か<11日目> 朝青龍、順調に10勝目_明日の波乱はあるか?<12日目> 今夜がヤマ場だ!携帯飛び交う終盤戦の魅力<13日目> ついに追いついた朝青龍、白鵬への流れを止めるのか<14日目> あっけなかった決定戦、「でもこれこそガチンコだったかも」<千秋楽>
(まだ評価されていません)
あなたも評価に参加してみませんか? 市民記者になると10点評価ができます!
※評価結果は定期的に反映されます。
|
empro は OhmyNews 編集部発の実験メディアプロジェクトです |