「ボンボン」との世評と違う麻生の素顔(岸井成格=毎日新聞特別編集委員)
2008年11月5日 リベラルタイム
ようやく解散、総選挙に踏み出すか。もし、総選挙で自民党が敗北し、小沢一郎民主党政権が誕生すれば、麻生太郎首相は超短命な首相の一人として歴史に名を残すことになる。
「そうはさせじ」とばかりに、麻生陣営からは『自画自賛』に近い麻生首相の人物論が流れてくるようになった。
麻生首相が執念を燃やしていた小沢民主党代表との比較論、それも『明るい麻生に、暗い小沢』『政策の麻生に、政局だけの小沢』という類の単純な選挙戦術から、これまで知られていなかった『意外な素顔』までバラエティに富んだ話も多く、短命なら短命なりに記憶されてもいいだろう。
吉田茂元首相の孫で、麻生財閥の御曹司であることは知られている。しかしそれに「学習院卒のお坊ちゃまでありながら、銀座で不良をやっていた。あのベランメェ調は、当時の名残り」という風評がついて回っている。これには学業成績が悪かったというニュアンスを含む。
これに対して同窓生の一人は「とんでもない」と反論する。
「高校生の時は学年全体で上から十一位、楽々東大に進学できる成績だった。学習院は成績が公表されるので誰でも知っていた」
これに関する『秘話』を側近の一人が語る。
「実は麻生さんは東大進学を決意して猛勉強していた。ところが、父親(太賀吉元衆院議員・麻生炭鉱のオーナー)から、『東大は官僚を育成するための大学だ。だから税金で賄われている。お前は税金で勉強するな!』と猛反対された。それで経営者の道を選んだ」
麻生家の躾は、外からはうかがい知れないほど厳しかったともいう。家での食事は玄米か麦飯が常で、学生時代の麻生さんは「家では銀シャリ(白米)を食ったことがない」とこぼし、友人宅での食事を喜んでいたという。
銀座で不良をやって遊べるようなおカネも持たせてもらえず、「いつもピーピーしていた」し、「クレー射撃の腕はオリンピック代表で知られているが、スキー、ヨット、ゴルフとスポーツ万能。スポーツマンが最も実像に近い」と、かつての友人たちの弁護論が聞こえてくる。
そして世界の金融危機と同時株安の深刻な経済、景気に直面し「経営者として、JC(日本青年会議所)会頭であった経験から、金融、実体経済に強い麻生さんの登場は、日本にとって貴重な巡り合わせだ。アメリカ、イギリスへの留学で語学にも強く、国際会議でも物怖じしないで堂々と渡り合える」というのが、政府・自民党の総選挙での最大の売りになるという。
ただし、連日のように、夜は外食、深夜までバーをハシゴする首相の動静を見て、あの塩爺(塩川正十郎元財務相)は「自分だけの体じゃない。過信するな」と注意したという。リベラルタイム12月号「岸井成格の政治談義」
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。
この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます。
投開票日を年越しさせた自公の「獲得予想議席」(リベラルタイム) - 2008年11月6日 |
小泉純一郎が脱出した潤いなき『苦界』(諸君!) - 2008年11月4日 |
政治ワイド(3) 「抜き打ち解散」 年末解散、1月投票も(読売ウイークリー) - 2008年11月4日 |