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なにわ人模様:南京大虐殺60カ年全国連絡会共同代表・松岡環さん /大阪

 ◇被害女性や元日本兵から聞き取り--松岡環さん(61)=大阪市北区

 ◇負の正視が尊厳取り戻す道 証言まとめた記録映画も完成

 多数の中国兵捕虜や市民を旧日本軍が殺害した1937年の「南京大虐殺」。その加害者、被害者双方の体験の聞き取りを約20年続けてきた。証言をまとめたドキュメンタリー映画「南京・引き裂かれた記憶」(武田倫和監督)が完成し、来年、大阪で上映される。

 10年間の主婦生活を経て、昨年まで小学校教諭だった。学校では、自主教材を使って在日韓国・朝鮮人や同和問題などの人権教育に取り組んだ。

 「南京」に取り組むきっかけは、「先生はどんな勉強をしているの?」という児童からの問いかけだった。本で読んだ知識だけで、子どもたちに十分教えられるのか--。そんな疑問から88年、中国・南京の大虐殺記念館を訪ねるツアーに参加し、初めて被害者の話を聞いた。

 日本兵に銃剣で約40カ所刺され流産したという女性は、「悪いのは日本の軍国主義で、日本の民衆も被害者だ」。中国政府の見解に沿って話した後、「日本人を見ると今でも気分が悪い」とつぶやいた。心の傷の深さを痛感した。

 以来、夏休みなどを利用して南京を訪ねること約50回。被害に遭った中国人約300人から証言を得た。

 その一方、事件から60年の97年からは加害者側の旧日本兵から聞き取りを始めた。元兵士の口は一様に重かった。出征や進攻の様子は話しても、南京攻略に話が及んだ途端、「忘れてしまった」と口を閉ざした。

 それでも脈がある、と感じた元兵士を何度も訪ね、体験を聞き出した。ある男性は、軽機関銃で数千人を撃ち殺したことを打ち明けて、「本当にむごいことをした」と目を潤ませた。

 だが、聞き取った元兵士約250人のうち、罪の意識を打ち明けたのは、この男性を含めほんの数人だけ。「戦争だから仕方がない」「殺すか殺されるかだった」「命令に従っただけ」などと多くが弁解した。5人の首を切った男性は「ハエを殺すのと同じ感覚」と言った。心の奥底にある中国人への強いべっ視が垣間見えた。

 虐殺の事実を否定する勢力からの抗議も少なくなく、勤務先の学校に乗り込まれたこともあった。「都合が悪くても歴史の事実は書き換えられない。自国の歴史の負の部分も正視することができると、世界に示すことが日本人の尊厳を取り戻す道」。そう信じている。

 3年前から、学生らに呼びかけ、南京で被害者の体験を聞き取るツアーを実施している。大学生になった教え子が参加してくれた。「実が結びつつあるなって感じます」と顔をほころばせた。【高田房二郎】

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 ◇「南京大虐殺 全国証言集会 in OSAKA」

 12月6日(土)午後6時半から、大阪市中央区のエルおおさかで、南京大虐殺で日本兵から性暴力を受けた中国人女性の証言などを聴く。参加費1000円。問い合わせは実行委(090・3826・1347)。

毎日新聞 2008年11月30日 地方版

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