December 01, 2008
ミスター・ポーゴの話
「鈴木大先生、鈴木大明神、お願いします」
必死な関川氏。
私自身、関川氏には一宿一飯の恩義があった。
実を言うと私が19歳で初渡米した際、
アマリロのアパートで醤油味のステーキを
ご馳走してくれたのである。
1500ドル足らずの所持金で28日間で全米を周り
最後のテリトリーとして寄ったのがアマリロだった。
ついに金が乏しくなり、オマケに関川氏の練習の取材に
行った際、そこのジムでなけなしの金まで盗まれてしまった。
関川氏はアパートに泊めてくれた上にメシまで食わせてくれた。
ということで、金を貸すことにした。金額は500ドル。
当時1ドルは250円ぐらいだったから、約12万5000円。
学生だった私にとっては力の入る金額である。
で翌週までに必ず返してくれる話だが、1ヶ月たっても
リングに復帰しない関川氏には聞くだけ無駄という状況だった。
そしてとうとう…私は結婚して日本に帰ることになった。
どうやっても返ってこなさそうだったが、
そしてちょうどいいタイミングで
ニコニコ顔の関川氏を発見。
「どうしたんですか？」と聞くと
「JCペニーのカードが送られてきたんだ。
ここ何ヶ月か買い物が出来なかったけど、
これで出来るよ」
「じゃ、関川さん、俺が貸しているお金を現金で返すかわりに
そのカードで俺のスーツを買って下さいよ。結婚式用に
必要ですから」と言うとすぐにOKになった。
当時の私は、学生の分際でそこそこ収入があったから
JCペニーやシアーズなどの大衆店にはほとんど行かず、
フォーリーズやジョスキーズ、ディラーズなど少しランクの上
でしか買い物をしなかった。
それをよりによって自分の結婚式に着ていくスーツを
大衆店で買うことに…。
しかしながらそれ以外、金が返ってくる可能性は考えられなかった。
苦肉の策だった。
関川氏とJCペニーに行き紳士服売り場へ向かった。
一生に一度の結婚式…どれにしようか、スーツにこだわるのは当たり前。
ところがである。10分もしないうちに「早くしてくれる」と言い出した。
あの言葉は許せなかった。
自分が現金を返せないからこういう形になったのに、百歩譲って
JCペニーのスーツにしたのに「早くして」はないだろう。
しかし…自分より9歳も年上の関川氏。
私は子供の頃から運動部の縦社会で生きてきた。
一つ上の先輩には殴られようが絶対服従の世界で育ってきた。
だからその習慣やメンタリティーが身体中に染み付き
脳を支配している。
アメリカに住んで長い今でも、それは抜けきらない。
ゴングで仕事をしていた頃、私より３つ年上の先輩である清水勉氏
には何を言われても服従した。
それを見ていたGK金沢氏など滑稽に思ったのだろう「貴方の怖い人」
などと清水氏を形容していた。金沢氏あたりは編集長になってから
清水氏に対しての遠慮がまったくなく、喧嘩してやりこめることも
しばしばあった。
とっとっと！！！
話が脇道にそれた。
話を戻すと、私はその場では文句も言えず、即断でスーツを買った。
自分自身納得いかなかったから、その埋め合わせと言っちゃなんだが、
ネクタイと靴にこだわることにした。
関川氏と買い物に行った翌日、私は23のガキのくせに「グッチ」のお店に
くりだして、グッチのネクタイと靴を買った。ベルトも腕時計も当時は
グッチばかりもっていた。
何はともあれ、金を現金で返せなくなり、100歩譲歩した私に
10分たたずに「早くしてくれる」といったミスター・ポーゴ。
まったくもってとんでもない男である。
（続く）
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必死な関川氏。
私自身、関川氏には一宿一飯の恩義があった。
実を言うと私が19歳で初渡米した際、
アマリロのアパートで醤油味のステーキを
ご馳走してくれたのである。
1500ドル足らずの所持金で28日間で全米を周り
最後のテリトリーとして寄ったのがアマリロだった。
ついに金が乏しくなり、オマケに関川氏の練習の取材に
行った際、そこのジムでなけなしの金まで盗まれてしまった。
関川氏はアパートに泊めてくれた上にメシまで食わせてくれた。
ということで、金を貸すことにした。金額は500ドル。
当時1ドルは250円ぐらいだったから、約12万5000円。
学生だった私にとっては力の入る金額である。
で翌週までに必ず返してくれる話だが、1ヶ月たっても
リングに復帰しない関川氏には聞くだけ無駄という状況だった。
そしてとうとう…私は結婚して日本に帰ることになった。
どうやっても返ってこなさそうだったが、
そしてちょうどいいタイミングで
ニコニコ顔の関川氏を発見。
「どうしたんですか？」と聞くと
「JCペニーのカードが送られてきたんだ。
ここ何ヶ月か買い物が出来なかったけど、
これで出来るよ」
「じゃ、関川さん、俺が貸しているお金を現金で返すかわりに
そのカードで俺のスーツを買って下さいよ。結婚式用に
必要ですから」と言うとすぐにOKになった。
当時の私は、学生の分際でそこそこ収入があったから
JCペニーやシアーズなどの大衆店にはほとんど行かず、
フォーリーズやジョスキーズ、ディラーズなど少しランクの上
でしか買い物をしなかった。
それをよりによって自分の結婚式に着ていくスーツを
大衆店で買うことに…。
しかしながらそれ以外、金が返ってくる可能性は考えられなかった。
苦肉の策だった。
関川氏とJCペニーに行き紳士服売り場へ向かった。
一生に一度の結婚式…どれにしようか、スーツにこだわるのは当たり前。
ところがである。10分もしないうちに「早くしてくれる」と言い出した。
あの言葉は許せなかった。
自分が現金を返せないからこういう形になったのに、百歩譲って
JCペニーのスーツにしたのに「早くして」はないだろう。
しかし…自分より9歳も年上の関川氏。
私は子供の頃から運動部の縦社会で生きてきた。
一つ上の先輩には殴られようが絶対服従の世界で育ってきた。
だからその習慣やメンタリティーが身体中に染み付き
脳を支配している。
アメリカに住んで長い今でも、それは抜けきらない。
ゴングで仕事をしていた頃、私より３つ年上の先輩である清水勉氏
には何を言われても服従した。
それを見ていたGK金沢氏など滑稽に思ったのだろう「貴方の怖い人」
などと清水氏を形容していた。金沢氏あたりは編集長になってから
清水氏に対しての遠慮がまったくなく、喧嘩してやりこめることも
しばしばあった。
とっとっと！！！
話が脇道にそれた。
話を戻すと、私はその場では文句も言えず、即断でスーツを買った。
自分自身納得いかなかったから、その埋め合わせと言っちゃなんだが、
ネクタイと靴にこだわることにした。
関川氏と買い物に行った翌日、私は23のガキのくせに「グッチ」のお店に
くりだして、グッチのネクタイと靴を買った。ベルトも腕時計も当時は
グッチばかりもっていた。
何はともあれ、金を現金で返せなくなり、100歩譲歩した私に
10分たたずに「早くしてくれる」といったミスター・ポーゴ。
まったくもってとんでもない男である。
（続く）
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