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【社会】

3万人、進む派遣社員のホームレス化 施設も定員突破目前

2008年11月29日 朝刊

支援団体の炊き出しに集まった元派遣社員を含むホームレス生活者=愛知県内で

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 急速な景気の減速で、解雇されて収入と住まいを同時に失った派遣社員の「ホームレス化」が進んでいる。名古屋市ではホームレス自立支援施設が昨年の倍の入所者を抱え、満員になる勢い。生活保護の相談件数が大幅に増える地域も。厚生労働省の全国調査だと、10月から来年3月までに少なくとも3万人の非正規労働者が失業するとの見通しで、雇用の崩壊に対する懸念は強まるばかりだ。

 「ビルの屋上で寝泊まり。毎日いつ飛び降りようかと思っていたけど、飛べなかった」

 名古屋市中村区のホームレス自立支援施設に入所する広島県出身の元派遣社員男性(40)は、弱々しい笑みを浮かべた。

 20歳で古里の広島県を出て、愛知県内の自動車工場で期間工や派遣社員として働いてきた。8月下旬に、派遣社員として勤めた名古屋市内の金属プレス加工工場を辞めざるを得なくなり、住み込みの寮を退寮した。名駅前にたどりつき、死ぬつもりで入り込んだのが、あるビルの屋上だった。

 ホームレスを経験した後、幸い施設へ入所でき、来月からは名古屋市の自動車部品関連会社で正社員として働くことも決まった。「奇跡だと思う。何とか定年まで頑張りたい。仕事がないと、気が狂いそうになるから」と声を絞る。

 男性が生活する自立支援施設の定員は72人で、現在61人が入所。昨年同期と比べ約2倍で、定員突破も目前。しかも従来、入所後約35日だった再就職までの期間も最近では長期化している。

 同施設の寮長は「派遣社員は仕事がなくなった瞬間に会社の寮を追われ『住所不定無職』になる。急速な雇用悪化で、次の職や住まいが簡単には見つからなくなった」と話す。

 生活保護を利用する動きも出ている。岡崎市では4月に956人だった生活保護受給者が、今月には1064人に増えた。年内に1100人を突破するのは確実だ。

 同市の生活保護担当者は「保護の相談件数は昨年同期比約4割増で、相談内容の8割が派遣先で解雇されて住む家がなくなったという訴え」と話す。

 同様に派遣社員の雇用が多かった名古屋市、愛知県豊田市などでは今のところ生活保護の相談や申請の増加はないが、「不思議なほど増えておらず、かえって怖い。嵐の前の静けさではないか」(豊田市の担当者)と今後を心配する声も聞かれる。

◆ホットライン開設

 製造業を中心に派遣労働者の契約打ち切りが急増しているのを受け、労働組合の「管理職ユニオン・東海」(名古屋市)と「名古屋ふれあいユニオン」(同市)は29、30日の2日間、「派遣切りホットライン」と題した無料電話相談を行う。

 失業と同時に派遣会社の寮を追い出されたり、違法性のある解雇通告など、非正規雇用にまつわる問題全般について相談・アドバイスを行う。

 相談は両日とも午前11時から午後8時まで。電話番号は、管理職ユニオン・東海が052(249)6669、名古屋ふれあいユニオンが052(679)3079。

 

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