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【記者手帳】「見ざる聞かざる」のソウル株式市場

 「お話できません」

 株価の見通しを尋ねた記者の質問に、ある大手証券会社のリサーチセンター長を務めるA氏は口をつぐんだ。彼は現在、株式市場に残る唯一の悲観論者(株価の先行きは明るくないと考えている識者)だ。

 繰り返し尋ねると、ようやく彼は「2003年から続いてきた4年連続の上昇傾向は、今年7‐9月期末ごろ終わるものとみられる」と一言、答えた。そう言いながらも「この考えは公式の見解として明らかにすることはできない」と釘を刺した。「記事にしないでほしい」「実名を明かすのは駄目」とも言った。そして「キム・ヨンイク氏も株価が下がると発言し、酷い目に遭った」と漏らした。

 彼が口にしたハナ大韓投資証券リサーチセンターのキム・ヨンイクセンター長も、ついこの間まで代表的な市場悲観論者だった。キムセンター長はある投資説明会で「株価は下がる可能性がある」と発言、非難を浴びた。同社の社員もしばらくの間、投資家たちから罵られたり、脅迫電話を受けたりしたという。

 記者もキムセンター長の悲観論を紹介する記事を書いたため、「なぜ株価を暴落させようとするのか」と読者から抗議の電話がかかってきた。

 今、ソウル株式市場では悲観論が姿を消し、楽観論だけが残っている。株価総合指数が1700‐1800台の時点ではまだ過熱を警告する声が出ていたが、いつの間にか消え失せてしまった。アナリストたちはあらゆる理論を当てはめ、株高を分析するのに忙しい。各証券会社券は互いに競い合うように株価の展望値を引き上げ、2300ポイントまで上がるという見解まで飛び出した。

 韓国銀行はコール金利を引き上げ、追加引き上げの可能性にも言及したが、株価はむしろ急騰している。原油高上がっても、ウォン高が続いても、投資家たちはひたすら「もっと上がる」と見込んで投資している。韓国証券のある支店長は「中年の主婦が個人年金を解約し、株式投資につぎ込もうとするのを止めたが、話を聞いてくれなかった」と話す。

 株価は上がることも下がることもあるもの。楽観論だけが存在するのは健全な株式市場ではない。ソウル株式市場の投資家たちは今、眼を閉じ、耳を塞いだまま「見ざる聞かざる」を決め込んでいる。

経済部=チョン・スヨン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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