余録

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余録:日馬富士

 「日」は太陽をデザインした象形文字だ。白川静著「字訓」によると、太陽の丸い輪郭の中に小点が入ることで、実体のあるものであることを示しているという。古代中国の語学書「釈名」には「日は実なり、月は闕(けつ)なり」の解説がある。月は欠けることもあるが、太陽はいつも満ちているといった意味のようだ▲26日、日本相撲協会理事会で大関昇進が決まった安馬は、新しいしこ名も披露した。「日馬富士」。日馬を「はるま」と読ませるところに師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)の工夫を感じさせる、新鮮なしこ名だ▲親方の解説によると、「馬」を残しつつも「日」には「相撲界に陽(ひ)をかざし、大輪の花を咲かせてほしい」という期待を込めた。親方の現役時代のしこ名から「富士」を譲ったのは、大関で満足せず、横綱まで一気に上り詰めてほしいという願いが込められているに違いない▲いつまでも「安い馬」では大関の地位にふさわしくない、という思いも親方にはあったことだろう。「こんなすごい名前をもらってうれしい」と日馬富士も満足の様子だった。名前負けすることなく、伝達式での使者への口上の通り「全身全霊で相撲道に精進」してもらいたいものだ▲九州場所での先輩大関の成績は、琴光喜が9勝6敗、千代大海と琴欧洲は8勝7敗。途中休場した魁皇を除けば負け越しこそ免れたものの、まるで欠けてばかりの月のような成績だった。新大関は見習うわけにはいかない▲次なる課題は、九州場所で逃した初優勝だ。親方は早くも優勝賜杯の夢を見ていることだろう。内閣総理大臣杯の授与で、名前を誤読されないか、少し心配だが。

毎日新聞 2008年11月27日 0時00分

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