VIOZONE 3

November
20
2008

 「キーボード・マウスに紫外線を照射させて殺菌する」 一見単純そうに見えるこの課題で、装置の基本構造をまずは立案しました。そして兎に角、近い状況を作って実験してみないと何もわかりません。それまでの知識の蓄積で、おおよその理論はわかっていましたが、まずは最初のスタートとして、体感することが非常に大切です。その結果、判ったことは、紫外線ランプの単管照射では、どうしてもブラインドになる面積が多く出てしまうということでした。当面、この課題に取り組むことが最初の壁となったわけです。キーボードをよく眺めてみると、約100個のキーが入れてされていて、ストロークは3~6mm(機種によって異なります)あります。キーの高さは5~15mm程度。キー間はトップで7~10mm、ボトムでは1~3mmです。つまり立体形状のキーが非常に狭い間隔で配列されていることが一目瞭然です。ここにUVランプ1本で照射し、相当の照射エリアを確保するためには、キーまでの距離が50cm以上必要という計算になってしまいます。しかしそれだけの距離を確保したなら、装置そのものは非常に大型になってしまい、製品の使い勝手は格段に低下してしまうだけでなく、設置場所の問題もあります。キーボードを殺菌するために、キーボードを持ち運ぶという行為を出来る限りなくさなくては、意味がありませんし、50cm以上の距離で殺菌するためには、出力の弱いUVランプの場合、相当に長い時間照射しなくてはならず、ユーティリティを著しく損なうばかりか、殺菌そのものが定着しないでしょう。ちなみにVIOZONEに使用したGL15UVランプですと、50cmの距離から大腸菌を殺菌するのに2分前後かかります。他の菌種を考慮すると5分前後の照射が必要となり、これではとても実用的ではありません。一般にUV放射出力は光源からの距離の二乗に反比例に近い特性がありますから、距離を短くすることが大変に重要なのです。仮に単管で作るとしても決め手になる反射方法が必要でした。

 

 反射板の素材は偶然にも得意とするアルミ素材がベストです。紫外線反射特性が非常に優れていて、これは従来のUV殺菌装置では皆使われているものです。兎に角、製品化のためにはユーティリティを非常に重要視しなくてはいけませんし、その中で前記の条件を満たす構造を作るということが非常に大変な仕事になりました。今回は特に試行錯誤が続き、プロトタイプを何度製作したか記憶にないほどです。一つ作るたびに、別の課題が出てくる。たとえば、UV-Cは基本的に人体に有害な光ですから、漏れ対策には神経を使う必要があります。人体に対する影響については、様々な文献で紫外線量の規制をしています。その紫外線量を大きく下回る漏れ量とすることも中盤以降の重要な取り組みとなりました。権利申請の関係でこれ以上詳細にはご説明できませんが、最終形として、2管方式で照射時間10秒以内、目標効果は95%以上の細菌やウイルスの種類をを99.99%レベルで殺菌可能な装置となり、これが需要上の容認できるユーティリティであると結論付けました。当然のことながらデスクトップで固定で使えるよう、省スペース性を考慮して、LCD(液晶ディスプレイ)用チェストとすることにしました。

 

 本来ならこの間の取り組みやエピソードをたくさんご紹介したかったのですがいまはこの程度でお許しいただきます。、苦労の末完成したVIOZONEのキーボードの殺菌エリアはキー間ボトム部までくまなく殺菌可能です。当然ストロークで使うものであり、また振動の出るものでもあるため、この点は非常に重要です。手で触る可能性のある4側方も十分に殺菌することが可能です。もちろん、キーボード・マウス以外のものでも殺菌可能であることはいうまでもありません。

 

 開発と同時に、この製品の有効性のテストや医療関係者、医師の方等々様々な方々にご意見を伺いましたし、匿名ということで様々な感染症の一般的な感染経路の分析や院内感染の可能性などもティーチング頂きました。意見も分かれるところですが、総じて「キーボードが感染経路となりうる」ことに対しては、肯定的なご意見をいただけたと思います。また院内感染に対しては、各医療機関で個別にサーベランスを行っており、また対策も行っていることもお聞きしています。そこにキーボードが組み入れられているかと言うことが非常に問題だという関係者の方が大半でした。

 

 僕が問題にしている点は、一言でいうなら「汚染された、また汚染される可能性のあるキーボードやマウスの使用環境の問題」です。必ず目や口の近くで手触により使われているという使用特性からは著しく接触感染(経口感染)のリスクが高いと言わざるを得ません。いや、リスクという見地では最も高いと言っても過言ではないと思います。また、使用の状態もあまり良いとは言えず、まして不特定多数の使用者が存在する場合は、非常にリスクが高い。この状況を放置すべきではないという観点です。手洗いの奨励や小まめな清掃は大切であることに異論はありません。ならば、他の物はいざ知らず、キーボード・マウスも同レベルの状況が必須だと思います。

 

 

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Posted by 有海啓介 | この記事のURL |