遺伝的な多様性が低く、環境変化の影響を受けやすいと考えられる名護市大浦湾のアオサンゴ群落=2007年9月
米軍普天間飛行場代替施設建設が予定されている名護市辺野古崎の東側で、昨年9月に発見された大浦湾のアオサンゴ群落は、石垣島白保の群落などと比較して遺伝的多様性が低く、単一遺伝子型の大規模群落であることが灘岡和夫東京工業大教授(沿岸環境学)らの研究で明らかになった。22日から静岡県で開催中の日本サンゴ礁学会で発表された。一般的に遺伝的多様性の低い生物は環境変化や病気などの影響を強く受けやすいと考えられており、日本自然保護協会の大野正人さんは「大浦湾のアオサンゴは特殊性を持った環境の中にある。辺野古の基地建設による影響が危惧(きぐ)される」と警鐘を鳴らしている。
アオサンゴは10月に発表された国際自然保護連合(IUCN)の2008年版絶滅危惧種リスト(レッドリスト)に初掲載され、国の天然記念物のジュゴンとともにその希少性は世界的にも認識されている。
灘岡教授らは7月、石垣島明石集落から北北東約1キロの海域で、長さ200メートル、幅30メートルの大規模なアオサンゴ群落を発見。その後、明石、白保、大浦湾の3地域のアオサンゴ群落の地形的、遺伝的特徴を比較した。
遺伝子レベルの調査によると、明石、白保のサンゴはそれぞれ遺伝的に多様な変異が見つかったが、大浦湾のサンプルはばらつきがほとんどなく、40サンプルが1つの遺伝子型に特定された。大浦湾のサンゴは、水深1―2メートルの浅い場所にある白保、明石と地形的な特徴も異なる。
灘岡教授は「仮説だが、大浦湾は隔離された状況で遺伝子状の特徴が単一になりやすいのかもしれない。アオサンゴは希少種で保全方法をきちんと考える必要があり、なぜ群落ができたかなど探る必要がある」と説明した。
大浦湾の群落確認など、同研究に協力した安部真理子沖縄リーフチェック研究会会長は「基地建設による土砂や海流の変化などの環境ストレスを考える必要がある」と基地建設に強い懸念を示した。
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