ノリコさんは13歳。埼玉県蕨(わらび)市に両親と住んでいる。今春、中学校に入学した。幼いころから一緒に遊んだ友だちのほかに、新しい友だちもできた。将来の夢もふくらみつつある
▼夢はあと数日でしぼまされてしまうかもしれない。両親ともども強制退去処分を受け、日本から出国するよう命じられている。その期限の11月27日が迫った。一家3人の国籍はフィリピン
▼姓はカルデロン。父アランさん(36)と母サラさん(37)は16年ほど前に日本に来た。他人名義の旅券で入国していたことが2年前に分かり、出国を命じられた。取り消しを求めて提訴したが今年9月に敗訴が確定した
▼日本で生まれ、日本で育ったノリコさんは、学校でも家でも日本語で話す。日本語しか話せない。おととい、在留特別許可を求める嘆願書を法相あてに提出し、霞が関の司法記者クラブで両親と一緒に会見した。「大好きな日本を離れたくない」
▼報道によると、嘆願書には大勢の署名が寄せられた。日曜に街頭で600人分を集めたときは同級生が応援に駆けつけた。応援の輪には地域の大人たちも加わった。アランさんが解体工事現場で働くなど両親のまじめな生活態度を知っているから
▼「ノリコが一番かわいそう」と両親は悲嘆にくれる。「将来、友だちとダンススクールを開いて、ダンスの先生になるのが私の夢」と中学1年の少女は訴える。願いは法相に届くだろうか。
=2008/11/22付 西日本新聞朝刊=