不発弾が市民に被害を与えているクラスター爆弾について、政府は、現有爆弾を全廃したうえで、欧州諸国が維持する「最新型」のクラスター爆弾も今後、導入しない方針を固めた。これで日本はあらゆるクラスター爆弾を保持しないことになる。人道面を重視したためで、代わりに子爆弾をまき散らさない単弾頭の爆弾を整備するため、約73億円を来年度予算に計上する。
日本は、子爆弾を数百個まき散らし、不発率が極めて高い「旧型」や「改良型」のクラスター爆弾を4種類保有している。政府は12月3日、クラスター爆弾禁止条約に署名する予定で、09年度から廃棄方法の調査を始める。批准後は8年以内に廃棄する義務を負う。
ただ、禁止条約案では、子爆弾が数個と少なく不発率が極めて低い「最新型」は例外として保有が認められた。独仏などが生産しており、欧州諸国が導入するとみられる。
政府は人道上、不発弾による「副次的被害を避ける」ことを重視。最新型でも不発弾による被害が完全になくなる保証がなく、コストもかさむため、導入を見送り、子爆弾による被害の根絶を目指す方針を決めた。
同時に条約の規制による影響を「極小化」する方策を模索。今後、子爆弾を持たずGPS(全地球測位システム)によって正確に目標に誘導し、より遠距離から狭い範囲を攻撃するロケット弾などを導入する。
日本は、海岸線から上陸する敵の「着上陸侵攻」を、大量の子爆弾をまくことで「面的に制圧」するため、クラスター爆弾を配備してきた。条約案の採択後、防衛省や自民党内の一部から「廃棄する旧型に代え最新型を導入すべきだ」との声が相次いだ。しかし、現在は着上陸侵攻の可能性が考えにくく、「面的制圧」の効果を疑問視する見方もあり、必要性が低いと判断した。
禁止条約案は、ノルウェーなど有志国や非政府組織が主導する軍縮交渉「オスロ・プロセス」が5月、日英独仏など107カ国の賛成で採択した。【鵜塚健】
毎日新聞 2008年11月21日 15時00分(最終更新 11月21日 15時35分)