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樋渡市長辞職届「病院」問い市長選

2008年11月20日

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樋渡市長の解職請求趣意書を読み上げる請求代表者ら=19日午後1時43分、武雄市武雄町昭和

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杉原豊喜議長(右)に「退職申出書」を提出する樋渡市長=19日午後3時34分、武雄市役所

 武雄市民病院の民間移譲問題は、根強い反対論に行き詰まりを感じた樋渡啓祐市長が出直し市長選で信を問うべく19日に辞職を表明する事態に。移譲先も決まり、市議会での議決という「民意の後ろ盾」も得て、実現を待つばかりにまで手続き上はこぎ着けながら、市を二分する騒動になりつつある。

 「リコールが始まれば、最長、半年にわたり市政の混乱を招く。市民生活の混乱を最小限に抑えるため、市民病院のあり方を市民一人一人に問いたい。『医療選択』の市長選と位置づける」

 武雄市役所3階の会議室。杉原豊喜・市議会議長に辞職届を提出した後、記者会見に臨んだ樋渡啓祐市長は、まばたきを繰り返しながら辞職の理由と出直し市長選への意欲を語った。

 辞職を決意したのは18日昼過ぎ。「これほど迷うのかと思うほど、すごく迷った」。会見では「池友会への民間移譲は、与えられた条件の中で最良で最高の選択」と自信を見せる一方、「混乱を招いた責任の一端は、私にある」と何度も繰り返した。

 市職員を前にしたあいさつでも樋渡市長は「私のせいで市政に混乱が起きる。皆さんの力で最小限に抑えて欲しい」と時折声を詰まらせながら訴え、拍手に送られて市庁舎を後にした。

    □   □
 「相談しないこと。するとぶれる」

 市長就任から2年弱の今年2月に出版した、自著で紹介した「法則」の一つだ。

 その言葉通り、今回の市民病院の民間移譲についても、自らが諮問した「行政問題専門審議会」が、医療の専門家を含めた審議会を立ち上げるよう求めた意見書を採り入れなかった。報道各社の質問にも「地元医師会が反対するのは分かり切っている」と答えるなど、「結論ありき」の強引とも言える政治手法が目立った。

 これに反発した地元の開業医、一部の市議や市民らが市民団体「市民病院問題対策室」を立ち上げ、市民病院の存続を求める署名活動を展開、市長のリコール運動の準備も進めていた。

 「対策室」は19日午後、名称を「武雄市長リコール推進対策室」に改称。21日に市長のリコール運動を選管に申請して22日から署名収集活動に入ると表明した。

 午後1時半からの会見では、解職請求の理由を(1)市長は市民の民間移譲反対の声を押し切って移譲先の決定を強行した(2)行政問題専門審議会が求めた専門家を含む地域医療専門審議会の設置を無視した(3)1万8千人の民営化反対署名などを黙視した(4)池友会への移譲決定は「できレース」で不公平・不透明だ、などと列挙した。

 解職請求代表者(5人)の1人、獣医師の山田清稔さん(65)は「市民の意見を聞かずに市民病院を勝手に売ってしまおうとする市長から病院を守るにはリコールしかない。市長の責任を市民の手で問いたい」と語った。

 その約2時間後。「リコール宣言」に対抗して、樋渡市長が市議会議長に21日付の辞職届を提出したことについて「対策室」は再度緊急会見を行い、「出直し市長選で市長が替われば、市民病院の民間移譲を白紙撤回させることができる」などと述べた。

 樋渡市長が21日に辞職した場合、解職請求の相手がいなくなる。樋渡市長は出直し市長選で信を問うとしていることから、「対策室」は「民主的な市政運営、市民病院の存続、地域医療を守る」の3点で合意できる候補者の選考を急ぎたいとしている。

 「対策室」の幹部の1人は「市長を選挙の場に引きずり出すことに成功した。市民病院は身近な問題だけに、激しい選挙戦になる」と語った。

■武雄市民病院の民間移譲を巡る経過

00年2月   国立療養所の経営を引き継ぎ市民病院に
07年11月   市が独立行政法人化または民間移譲による経営改革の方針を発表
  12月   国が公立病院改革ガイドラインを発表。3年以内の黒字化求める
08年1月   市民病院の存続を求める署名1万4千人分が市に提出される
       院長を除く11人の常勤医師が辞職願提出。以後、医師退職相次ぐ
  4月1  医師不足で救急病院の指定を返上
  5月20日 市長、民間移譲の方針発表
    28日 武雄杵島地区医師会が医療関係者を交えての再議論を市に要請
    30日 市議会が臨時議会で深夜に移譲先公募のための予算案を可決
  6月2日 市が移譲先法人の公募開始
    8日 医療関係者や市議らが「武雄市民病院を存続させる会」結成
  7月7日 市が医療法人池友会(北九州市)に移譲の優先交渉権を付与
    15日 医師会、市から受託する市民医療保健事業の見直し示唆
       「民間移譲を一方的に進めるなら重大な決意をする」と緊急声明
    16日 10年2月に市民病院を池友会へ譲渡する議案を市議会が可決
  8月2日 開業医ら民間移譲反対派が「武雄市民病院問題対策室」結成
    11日 池友会から医師派遣を受けて救急救命センターの24時間体制再開
  10月12日 対策室、民間移譲が撤回されなければ市長リコールの方針を決定
  11月19日 市長が辞意表明

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