ここから本文エリア 樋渡市長辞職届「病院」問い市長選2008年11月20日
武雄市民病院の民間移譲問題は、根強い反対論に行き詰まりを感じた樋渡啓祐市長が出直し市長選で信を問うべく19日に辞職を表明する事態に。移譲先も決まり、市議会での議決という「民意の後ろ盾」も得て、実現を待つばかりにまで手続き上はこぎ着けながら、市を二分する騒動になりつつある。 「リコールが始まれば、最長、半年にわたり市政の混乱を招く。市民生活の混乱を最小限に抑えるため、市民病院のあり方を市民一人一人に問いたい。『医療選択』の市長選と位置づける」 武雄市役所3階の会議室。杉原豊喜・市議会議長に辞職届を提出した後、記者会見に臨んだ樋渡啓祐市長は、まばたきを繰り返しながら辞職の理由と出直し市長選への意欲を語った。 辞職を決意したのは18日昼過ぎ。「これほど迷うのかと思うほど、すごく迷った」。会見では「池友会への民間移譲は、与えられた条件の中で最良で最高の選択」と自信を見せる一方、「混乱を招いた責任の一端は、私にある」と何度も繰り返した。 市職員を前にしたあいさつでも樋渡市長は「私のせいで市政に混乱が起きる。皆さんの力で最小限に抑えて欲しい」と時折声を詰まらせながら訴え、拍手に送られて市庁舎を後にした。 □ □ 市長就任から2年弱の今年2月に出版した、自著で紹介した「法則」の一つだ。 その言葉通り、今回の市民病院の民間移譲についても、自らが諮問した「行政問題専門審議会」が、医療の専門家を含めた審議会を立ち上げるよう求めた意見書を採り入れなかった。報道各社の質問にも「地元医師会が反対するのは分かり切っている」と答えるなど、「結論ありき」の強引とも言える政治手法が目立った。 これに反発した地元の開業医、一部の市議や市民らが市民団体「市民病院問題対策室」を立ち上げ、市民病院の存続を求める署名活動を展開、市長のリコール運動の準備も進めていた。 「対策室」は19日午後、名称を「武雄市長リコール推進対策室」に改称。21日に市長のリコール運動を選管に申請して22日から署名収集活動に入ると表明した。 午後1時半からの会見では、解職請求の理由を(1)市長は市民の民間移譲反対の声を押し切って移譲先の決定を強行した(2)行政問題専門審議会が求めた専門家を含む地域医療専門審議会の設置を無視した(3)1万8千人の民営化反対署名などを黙視した(4)池友会への移譲決定は「できレース」で不公平・不透明だ、などと列挙した。 解職請求代表者(5人)の1人、獣医師の山田清稔さん(65)は「市民の意見を聞かずに市民病院を勝手に売ってしまおうとする市長から病院を守るにはリコールしかない。市長の責任を市民の手で問いたい」と語った。 その約2時間後。「リコール宣言」に対抗して、樋渡市長が市議会議長に21日付の辞職届を提出したことについて「対策室」は再度緊急会見を行い、「出直し市長選で市長が替われば、市民病院の民間移譲を白紙撤回させることができる」などと述べた。 樋渡市長が21日に辞職した場合、解職請求の相手がいなくなる。樋渡市長は出直し市長選で信を問うとしていることから、「対策室」は「民主的な市政運営、市民病院の存続、地域医療を守る」の3点で合意できる候補者の選考を急ぎたいとしている。 「対策室」の幹部の1人は「市長を選挙の場に引きずり出すことに成功した。市民病院は身近な問題だけに、激しい選挙戦になる」と語った。 ■武雄市民病院の民間移譲を巡る経過 00年2月 国立療養所の経営を引き継ぎ市民病院に
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