日本の侵略を否定する論文を発表した田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長が更迭された航空自衛隊の西部航空方面隊(司令部・福岡県)で、「部隊での歴史教育の機運を高める」として「歴史研究発表会」の開催を検討していたことが、わかった。来年3月に初めて開かれる計画だったが、航空幕僚監部(空幕)では「構想はあったが田母神氏の問題もあり、実施する予定はない」としている。
同方面隊トップの司令は今年8月から、空幕の前人事教育部長(54)が務めている。前部長は今年6月、田母神氏が投稿したアパグループ主催の懸賞論文への投稿を促す文書を全国の部隊に出している。
空幕などによると、今年10月時点では、「近代日本戦争概史」という部内資料に基づき、同方面隊の各部隊から選ばれた代表者が隊員を相手に講義を行う構想だった。歴史教育を取り入れることで、「日本人としての誇りや愛国心を醸成させ、より強固な使命感を確立する」狙いだったという。
こうした歴史教育の発表会は空自の部隊ではほかになく、同方面隊が初めての構想だったという。発案者は不明だが、田母神氏の指示などは確認されていないという。
発表会資料となる予定だった「近代日本戦争概史」は現在、空幕教育課が作成中。南京事件や従軍慰安婦、東京裁判など明治から昭和にかけての史実をまとめるとみられるが、「中立的な立場で客観的な記述になる」(空幕)。隊員の自己研鑽(けんさん)などに使われる予定という。
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空自小松基地(石川県)の民間宿舎契約がアパグループに集中していた問題で、03、05年度が特に多かった点について、防衛省の豊田硬報道官は、「基地航空祭で、(一時的に)需要が集中した」と説明した。