吉原健二さんの妻靖子さんが刺された自宅玄関付近=18日午後9時42分、東京都中野区上鷺宮2丁目、細川卓撮影
二つの事件を結ぶ線の先に浮かび上がるものは何なのか。さいたま市と東京都中野区で18日に狙われたのは、2人の元厚生事務次官の自宅だった。捜査当局は「連続テロ」との見方を強めている。誰が、何のために――。絶対に許されない暴力の連鎖に、憤りと不安の声が上がった。
「年金問題と関係があるのだろうか」。東京都中野区の現場付近では、近所の人の多くが、吉原健二さんが厚生省の事務次官や社会保険庁の長官を務めたことを知っていた。「こんな静かなところで事件が起きるなんて」と不安を語った。
付近は西武池袋線富士見台駅の南側の住宅街で、マンションや戸建て住宅が密集している。
吉原さん宅から数軒離れた無職男性(70)によると、午後6時半ごろ、男性の妻が犬の散歩に出かけようとしたところ、近くの女性が「大変だ。吉原さん(の妻)が倒れている」と言っていた。
男性が駆けつけると、吉原さん宅の玄関先から5メートル離れたところに吉原さんの妻靖子さんが歩道に仰向けに倒れていた。右胸付近は血だらけで、靴は履いていなかったようだったという。
男性が「大丈夫か」と声をかけると、靖子さんはうなずいた。その後、「主人が狙われているのかもしれない」と話し、自宅にいなかった吉原さんの安全を気にしていた。
男性が近所の人から聞いた話によると、「宅配便です」と言われて出たところを、侵入してきた男に刺されたという。「吉原さんが厚生省の事務次官だったことは知っていた。直感で、さいたま市の事件の犯人と同じかな、と思った」と話した。
近所に住む会社員の男性(61)は「事務次官ということは有名だった。吉原さんは十数年ぐらい前、退職する少し前に、引っ越してきたのではないか」。現場は午後6時半ごろでも人通りは多いという。
現場から約200メートルのところに住む男性会社員(41)は「昨今、年金問題などいろいろな問題が起きていたので、厚生労働省に恨みを持っている人がいるのかもしれない」と推測した。
近所の主婦は「吉原さんの奥さんはとても感じのいい方で、なにか恨まれることがあるとは思えない」と話す。「年金問題で社保庁がたたかれているので、気の毒だなと思っていた」