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日本代表は内部から崩壊する

●「総合コーチでびっくりした」

「世界中で活躍する(日本の)野球人が一致団結して最強チームをつくりたい。前回同様、世界一を目指します!」

 来年3月に開催される第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表監督に就任した巨人の原監督が昨12日、東京都内で就任会見を行った。

 会見では新コーチに任命された6人も挨拶。原監督は「野球人として尊敬する面々を選出した。この先輩とやれたらというものが結成できた」と得意満面で、「重圧? 元来重圧を感じない性格。全く不安はありません!」とやたらとハイテンションだった。

 が、巨人の渡辺会長じゃないが、妙な明るさに不安を感じるのも事実。監督の人選を進める過程では「国際経験」が重視されていたはずだった。そこで第1回WBC、北京五輪で監督を務めた王や星野という名前が挙がっていたのに、いつの間にかその部分が抜け落ちた。原監督をはじめ、今回選出された6人のコーチ陣は国際経験がほとんどない。

 原監督とコーチ陣の表情が対照的だったのも気になる。「総合コーチ」というあやふやなポストに就任した伊東コーチは会見後、「バッテリーコーチだと思っていたら総合コーチでビックリした。自分がバッテリーを見るのかと思っていた。監督と相談してどう動くか確認しないと」と早くも戸惑い気味。伊東コーチは西武時代に松坂とバッテリーを組んでおり、今回もエースとしての活躍が望まれる松坂とのパイプ役にも期待されているが、西武関係者に言わせれば「とんでもない」と、こう続けるから、こちらも不安でいっぱいだ。

「松坂が伊東のサイン通り投げて打たれた後、『何でこんな球を投げたんだ』と伊東本人に叱責(しつせき)されてショックを受けたことがあった。それ以来ギクシャクし始めた2人を見かねて、当時の東尾監督は、松坂が登板する時は捕手を中嶋に代えたほどでした。師弟関係だなんてとんでもありませんよ」

 ヘッド格の投手コーチに就任した山田コーチは、もう一人のキーパーソン、イチローとオリックスの投手コーチ時代から、公私に親しい間柄だ。こちらのパイプには水漏れはなさそうだが、理論派を自負するプライドが時に意見の衝突を招く。オリックスコーチ時代は仰木監督と、中日コーチ時代は星野監督とぶつかった。代表では実質ナンバー2で、年齢は原監督よりも10歳上。かつてのように意見が合わず、原監督とドンパチが始まっても不思議ではない、と心配する関係者は少なくない。

●自己チュー・イチローへの反発

 選手の選考の方にも問題が出てくる。

 初顔合わせとなった日本代表の首脳陣は、さっそくこの日、会議を開き48人の代表候補を選出。来年1月20日に40人の最終候補を発表し、2月15日から予定されている合宿での選考を経て、2月下旬に28人のメンバーを決定することになった。

 原監督は「サムライジャパンのために全身全霊で戦うと言ってもらえることを信じている」と、力を込めていたが、当然、イチロー(マリナーズ)が日本代表の核になる。これが一番の問題になりそうだ。

「イチロー中心になることがかえってチームの足並みを乱しかねない」と、前回のWBC関係者は懸念するのだ。

「イチローは青木(ヤクルト)や川崎(ソフトバンク)ら若い選手から尊敬を集めているが、中堅、ベテランの中には、イチローに嫌悪感を持つ選手がいる。前回のWBCでイチローは、宿舎も他の選手とは別格の高い部屋に泊まり、一人だけミーティングに顔を出さなかった。王監督に実質的なキャプテンに指名されたとはいえ、グラウンドでは年上である宮本や谷繁らに敬語を使わず、『いくらなんでもやり過ぎだ』と不満を漏らす選手、関係者も多かった」

 イチローは星野北京五輪監督がWBC監督に就任することが決定的になった際、「WBCは北京のリベンジの場ではない」などと暗に星野批判を口にしたが、「だったらオマエが監督をやれ!」と腹を立てる選手、関係者が実は多かった。すでに上原(巨人)などは出場辞退を表明しているが、イチローとの関係も背景にあるともっぱらだ。

●相手はメンバーをガラリ一新

 そうでなくても今回のWBCは、前回に比べてライバル国のチーム力はアップ。ディフェンディング王者である日本へのマークは厳しくなる。

 世界の野球事情に詳しいスポーツライターの友成那智氏は言う。

「前回大会は各国の日本の位置付けは決して高くなかったが、今回はエース級をぶつけてくる可能性は高い。アメリカ、ベネズエラ、ドミニカ共和国、キューバの4強はもちろんのこと、カナダ、メキシコも侮れない。特に日本が北京五輪で勝利したカナダは、ハーデン(カブス)、フランシス(ロッキーズ)などメジャー投手が揃う手ごわい相手。五輪の時とは全く別のチームと考えたほうがいい」

 会見で「目指す野球?野球道は武士道が入っている。礼に始まり、礼に終わるというように、律儀さがある。これは世界中に認められている部分。日本の野球らしい戦いのもと、しっかり戦いたい」と言った原監督。やっぱり不安だ……。

(日刊ゲンダイ2008年11月13日掲載)


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