のるか、そるか? 〜hane作品販売開始 | 09 Nov 2008 (Sun) |
先週末、チームで伊東に行って来ました。 強化合宿というわけでもなく、広々した別荘で、はしゃいでカレーを 食べきれないほど作ったり、淡々とダーツやポーカーをしたりしました。 ちなみに私、ポーカーでは圧勝でした。 カードの周りが良く、役なしのブタでも威圧、その上、なんと キングの5カードが来たのです。 (映画「スティング」のポール・ニューマンより強い手!) 運悪く、場に良い手を持っている相手がいなかったため、 掛け金を吊り上げ切れなかったのですが、それでも 「おそろしく良い手」と言うのは、なかなかにスリリングなものです。 そして同時に、ポーカーにおいて「良い手」は絶対、相手に 悟られてはなりません。いわゆる、ポーカー・フェイスです。
さて、では、haneがこの度はじめた販売システムについて 「売れる」「儲かる」あるいは「勝つ」という視点から、ちょっと 考えてみたいと思います。 これは私が過去、組織の商業プランナーとして鍛えられた時期の 経験則で、数学的確率とはまた別の見方なのですが、 「一定の道理がある」という点ではカードゲームと同じです。 売る物と市場、売り方と消費者心理と言うのが、いわば配られた牌、 ないしカードです。ここから、haneが行なっている販売システムについて、 第三者視点で勝算を考えてみましょう。
少人数で可能な大規模制作と販売、さらに基本的に同人形態。 出資者、仲介者がいないため、安定性も得られます。 (ハイリスクな賭けではないとも言い換えられます。) また「作品がある=勝つ確率自体が存在する」と言う時点で、 haneの方法は、勝つ条件から大きくずれた物ではありません。 作品の中身によっては、大勝ちする可能性もありますので、総合すれば、 勝つのは時間の問題とも言えるでしょう。 しかし、ここからが問題です。 時間それ自体が、心理的、物理的な負荷、ペナルティになる点については どうでしょう。 習作として完成させたiアプリ作品は、すでに販売が行なわれており、 それぞれ自信の持てる出来栄えです。 しかしながらこの二作は、売れないでしょう。 私が断言してしまうのもどうかと思うのですが、作品完成度それ自体に ウェイトが置かれており、「売るため、勝つためにすべき事」を 試行錯誤したわけではなかったのです。 ポーカーに例えるなら、良い役を作るのに必死で、場の状況(お客様)を 見ていなかったとも言えます。そうすると例え良い役ができたところで、 空気が読めずにブタ(NoPair)に負けてしまう……、 まあ、ありがちな展開となってしまうわけです。 アンケートは、私が急遽提案したポーカー・フェイスです。 これは実に良い効果でした。 普段焦っている私ではなく、むしろ周囲のスタッフがユーザー様の一言に、 一喜一憂しているのです。そして「売れない(勝てない)」とため息。 しかし実際のところ、売れる事が目的ではなく、場の空気(需要)を 読む事が目的なのですから、無理に勝とうとしてはいけないし、 また勝てるはずもないのです。 ですから、私は重ねて、アンケートと完全版無料頒布の延長を提案しました。 果報は寝て待て、の心構えです。 あるいは、ここで待てないが故に、負けてしまうのです。 私どもは、将来勝つために、まず負けるの必要があります。 そしてユーザー様に、商品として購入するかどうか気分が揺れる、 作品の対価を払うか否かの勝負、いわば「のるか、そるか、の心境」に なっていただく必要があるのです。 ですから、どうぞ無料で、完全版を遊んでください。 そして遊んでみた印象、思いのたけをアンケートメールにぶつけてください。 私どもにとって、様々なご感想や厳しいご意見を謙虚に解体していく事こそ、 もっとも大切な、勝つための姿勢なのですから。
ゲーム職人を職業とするならば、必ず勝たなくてはなりません。 求められている物を作り、機を誤まらずに打ち出す事。 良い批判を糧に、作品を作り続け、また率先して勝とうと考えずに、 半自動的に「勝つ確率」を上昇させていく事。 そして何より、待つべき時に待てる事。
11月、hane販売開始。 冬の訪れと共に、私は少し「待つ事」に慣れてきたようです。
↑製作中の4カード。昔取った杵柄で、解像度別ドット絵で攻めてみました。 ちなみに主観視点の女の子はちゃんと「中身から」描いております。ゲーム中どう使うかは秘密。けっこう・マスキング仕様なのです。
haneゲームプランナー・木邨圭太
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