いしけりあそび

一言メッセージ :ひとりで石けって遊んでます。いじけて、かも。たまにスペイン語。ラテン音楽は人生です。ああ、人生なんて...

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その他雑感

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○○○!知恵袋 国籍法は改悪なんでしょうか?

質問者:匿名希望

 国籍法の改悪反対で議員が立ち上がったそうです。
http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/795468
 マスコミが沈黙しているなか、危険な法律で日本が性奴隷とテロリストと三国人のせいで崩壊するらしいです。
 心配で夜もねむれません。どうにかしてください!

回答者:いしけりあそび
どんな人:専門家
自信:自信あり

 スペイン語を読める人からは「おかしな議論に巻き込まれたくないから、メレンゲ紹介するよ」っていってたくせに! といわれそうですが、まあそこはアッチいったりコッチいったりの「いしけりあそび」ですから。あなたの安眠のためにひとはだ脱ぎましょう!

 国士の皆さんがご心配されているのは、要するに虚偽の生後認知により子が国籍を取得して、母がそれを滞在の理由にしようとする場合ですから、そこから説明しましょう。
 まず、実際に法改正で虚偽認知の可能性が広がるのは、子どもが産まれてかなり時間が経っている場合に限られるでしょう。というのも、現行法でも、胎児認知をした場合は国籍法2条の規定にしたがって法務局での審査なしに日本国籍は取得するのですから、最初からその気なら、胎児の段階でさっさと虚偽認知をしてしまえばすむからです。
 次に、母が海外にいる場合は、むずかしいでしょう。というのも、認知された子の母は自動的に在留資格が与えられるわけではないからです。認知された子の母の在留資格は「定住者」(入管法別表第2)、その解釈上の根拠は平成8年7月30日付法務省入国管理局長通達「日本人の実子を扶養する外国人親の取扱いについて」です。この通達の解釈上、日本人の実子とされる子が外国で養育されている場合は、外国人親が日本で生活しなければならない理由、本国における日本人の実子の監護・養育の実績及び引き続き日本で監護・養育が行われることの立証が必要です(「国際人流」1996年10月号32頁)。つまり、国籍取得届の段階で、認知の真実性が審査され、さらに母の在留資格の手続(在留資格認定証明書交付申請)の段階で、認知の真実性(母の在留の根拠は認知された子の養育ですから、現在の実務でも、この点を入管では普通に審査しています)に加えてあれやこれやを調査するわけです。認知をした男性の渡航歴を参照されたり、父母別々に、知り合った経緯や交際の状況などをインタビューされれば、虚偽の認知をつらぬき通すのは難しいでしょう。
 さらに、日本に滞在している場合であっても、母に在留資格がある場合は、子についても在留資格が与えられるのですから(上記「定住者」に関する平成2年法務省告示第132号の第6号)、社会福祉に関する国籍条項が法令ないし運用上ほぼ全廃されている現在では、虚偽認知をしてまで日本国籍をとらせる動機がありません。
 また、在留資格がないまま日本に滞在している外国人母が産んだ外国人父の子であっても、外国人父に在留資格がある場合で、結婚の可能性があれば、現在の実務では婚姻を理由に在留特別許可(入管法50条1項4号)が比較的容易に取得できるのですから、虚偽認知などという危ない橋を渡るバカはいません。
 さらに、これは確立した実務ではなく、まだ流動的な面もあるのですが、結婚の可能性がない場合でも、外国人父に在留資格がある場合は、外国人父の在留資格次第では、母と子には在留特別許可の可能性があります(上記の平成8年7月30日通達は、在留資格変更に関するものですが、在留特別許可にも実務上準用されています。なおこの場合子の日本国籍の有無は問題にされていません。)。これはわたしの著書の84ページの注釈で紹介しています。したがって、この場合もやはり虚偽認知の可能性は低いでしょう(なお、子については出生後30日以内であれば在留資格取得申請で正当に在留資格を取得することも可能です。)。
 とすると、この度の法改正で、虚偽認知が問題になるのは、いずれも在留資格のないまま日本に滞在する外国人父と外国人母の間に生まれた子で、子が出生してからある程度経過しているケースに限られます。
 ただですね、ここまで読めばわかると思いますが、実は単に在留だけを問題にするのであれば、上記の平成8年7月30日通達で、虚偽認知がばれなければ、これまでも在留特別許可は取得できたのです。改正法の施行後は、日本人から認知された子を養育している母が、国籍取得届を出さずに入管手続だけをしていると「なんで子の国籍取得届しないの?」と怪しまれますし、入管だって届出さえすれば国籍が取得できる子を退去強制手続に載せるのは仕事を増やすだけですから、国籍取得届を出さないと、在留特別許可の手続は進まないでしょう。要するにですね、今後は、いわゆる「定住母子」の事件は、入管と法務局の双方の審査を受けなければならなくなるので(手続がめんどうな分、認知をしてくれる人もみつけにくくなるでしょう)、虚偽認知で滞在をもくろむ人からすると、かえってめんどうなことになったのです。まあ、インターネットにでまわる法案に対する理解をみる限りは、簡単になったとカン違いしてチャレンジするおっちょこちょいもでてきそうですが。
 なお、わたしは在留資格に関してはたくさんあつかっているので〜数えたことはありませんが、500とか600じゃないですよ〜仕事がら、虚偽認知の事件も偽装結婚の事件も知っています(もちろん、自分では扱いませんよ。入管にとっては「出入りの業者」なもんで信用第一でやらせていただいています。)。でも、ばれずにきている偽装結婚はいくらか知っていますが(この場合は子どもは嫡出子として日本国籍が取得できます)、虚偽認知でばれずに在留資格を取得したケースは、世間に皆無とは断言しませんが、1件も知りません。認知は婚姻とちがって同時に複数できるものの、とりあえず現時点で同居のふりだけしていればいい偽装結婚にくらべて、過去の経緯も調べられるので、偽装で通すのは難しいのです。結婚とちがって解消も容易ではありませんので偽装の相手もみつけにくいです。例の裁判でも、国は偽装認知のおそれを指摘していましたが、週刊朝日の記事が証拠として提出された以外に、具体的な事例はまったく示されませんでした。
 
 さて、この度の法改正でDNA鑑定を求めるのも、立法論としては考えられなくもありません。
 しかしながら、そうであれば、おなじく虚偽の可能性のある胎児認知の件でDNA鑑定を求めないこととのバランスをどう考えるのか問題があります。胎児認知の場合は、国籍法2条で認知後、出生と同時に法務局に届け出なくても当然に日本国籍が与えられます(なお、胎児も羊水を採ればDNA鑑定できるそうです。ご指摘を受けて初稿を訂正しました)。
 さらにやはり虚偽の可能性のある認知準正や婚姻準正の場合に、DNA鑑定を求めないまま日本国籍の取得が認められるのに、生後認知だけにDNA鑑定を求めるのもバランスを欠くでしょう。そもそもこの改正は胎児認知や準正の場合との差別を問題にしていたのですから。
 おや、ちょっと待てよ、それをいうなら嫡出子だってほんとにその夫婦の子かなんてわかりませんね。いっそのこと日本人は全員DNA鑑定をすることにしましょうか?

 さて、立ち上がった議員さんのアレですが、いちおう選良さまの提言なので、プロがチェックしてみましょう。

一、第三国の女性を、国内の犯罪組織に所属している男性が大量認知して、売春等犯罪に悪用。(国際的に「性奴隷」と批判される)

 まず、日本語がおかしいです。第三国というのは、Aという国とBという国があって、それ以外の国をさす用語ですが(たとえば、コロンビアの難民が、日本で難民申請が認められずに、別の国にいく場合に、その別の国を第三国といいます。)、この人たちは、いったいどこの国のことをさして「第三国」といっているのでしょうか?
 まあ、ここは単に「外国」を「第三国」と言っていると理解しましょう。ここで認知される女性は、20歳未満ということになりますね(国籍法3条)。売春させるのであれば、本国の出国手続だってありますし(コロンビアがそうですが、人身売買被害者送り出し国とされている多くの国では、未成年の出国はかなりうるさいです。)、ロリコンの多い日本人男性を想定しても15歳ぐらいにならないとだめでしょう。とすると、その犯罪組織の人は、15年ぐらい前にその女性の母の住んでいる国に行ったことがある人で、そこでした大量のSEXを法務局でとくとくと説明して、彼らを納得させる必要があります。なお、国籍取得届は15歳未満は法定代理人である母が、15歳であればその女性自身が届出をする必要があるので(国籍法第18条)、彼女たち自身が、その男性の説明と口裏あわせをする必要があります。ああ、なんとめんどくさてデンジャラスな手続きなんだ!観光ビザで連れてきたほうがよっぽどカンタンだよ!

二、国際テロリスト及びその子孫を認知することも可能になる。仮に、正規の日本国籍を取得した「日本人」がテロ事件を起こした時に損なう国の名誉は甚大である。(国際的にテロ国家と批判される)

 う〜ん。これは何をいいたいのかよくわかりませんが…認知によって国籍を取得できるのは20歳未満ですから、要するに18歳ぐらいの国際テロリストを虚偽認知するとか、女テロリストの子を虚偽認知してその子が将来テロをするのを心配しているのですね。

三、現在、日本の国籍が高額で売買されている現状では、日本国内に長期滞在することを目的として、犯罪組織の男性でなくても、経済的に困窮している男性に高額な報酬で「偽装認知犯罪」が一般的に行われるであろう。

四、第三国で生活している女性が、日本の「社会福祉制度」の悪用を意図して、「特別在留許可」等の目的で第三国で生まれ生活している第三国人の子供を、日本人男性に「認知」してもらい日本入国を果たす。「改正案」には扶養の義務がないので、入国後は「育児手当」「生活保護費」など税金が使われる。

 うえで説明したのでパス。

五、扶養の義務が無いことで、国内に短期滞在している第三国人女性が「特別在留許可」取得を目的として、「大金」を支払って日本人男性の子供を妊娠する可能性もある。これは「偽装認知」としての犯罪ではないので、「DNA鑑定」しても防ぐことはできない。

 これって日本人の実子なんでしょう? なんで日本国籍を取得してはダメなのかわかりませんね。
 なお、扶養の義務は民法877条で規定されていますから、これまでも、またこれからも、認知した男性には生じます。いや、条文なんて知らなくていいんですけど、普通に考えて、母が非婚だろうが外国人だろうが、子どもを作っておきながら父に扶養義務がないなんてありえないでしょう。なんだか品格をうたがいますね。
 ところで、扶養義務って家族法ですよね。国籍法に扶養義務を規定している国がどっかにあるんですかね?

 あと、虚偽届けの罰則がどうしたこうしたいっている人もいますが、認知は戸籍に記載されるので、虚偽認知をすれば、公正証書原本等不実記載罪&行使がついてきます(認知は父、国籍届けは認知した父に親権を認める国以外は母単独ですけど、共犯で併合罪になるでしょう)。こっちは最大で懲役5年ですから(刑法157、158条)マックス7.5年(47条)。虚偽認知をする人は、変なブログをあてにしないで専門家の意見を聞いてくださいね。


 この法律の改正で、これまで父母の婚姻という自らには変えようのない事情によって、国籍を取得できない、という差別に苦しんでいた子どもたちが、国籍を取得できるようになります。この改正によって、日本は以前よりもちょびっとだけ人権を大事にする国になります。これはとてもすてきなことです。
 さあ、匿名希望のあなたが女性ならお休みのキッスをささげます。どうぞ、安心してねむってくださいね!

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