【第22回】 2008年09月09日
「アメリカはいずれ死刑制度と決別する」
米死刑情報センター(DPIC)幹部に聞く
そもそも、死刑については理論と現実で認識に開きがある。
米国民は、極悪犯罪については65%が死刑を支持すると答えるが、質問を若干変えて死刑と終身刑のどちらを支持するかと問われると、50%が終身刑を支持し、死刑支持者は少なくなる。現在、陪審員も死刑か否かではなく、死刑か終身刑のいずれを採るかを問われるようになっており、実際終身刑が選択されることが多くなっている。
また死刑のコストの高さも明らかになってきた。囚人を40年間拘置しても、死刑よりは安い。死刑執行までには多くの司法過程を踏まねばならず、高いコストがかかるのだ。ニュージャージー州は昨年末、死刑制度を廃止したが、これも現実的な判断によるものだろう。死刑執行まで時間がかかるので、今後20年間にあったとしても1~2件でしかない。それならば制度を保持する理由がないという結論に達したのだ。
州が廃止に踏み切ったのは1976年以来のことだ。現在50州中36州が死刑制度を保持しており、テキサス州など南部州は依然多数の死刑を執行しているが、奴隷制度や拷問の廃止と同様に、いずれ全州が死刑制度を廃止するだろうと、私は予想している。
死刑制度によって犯罪率が抑えられるといわれるが、これも当てにならない。犯罪が抑えられるから死刑制度を支持すると答える国民は13%と少なく、調査結果も入り交じっている。犯罪率が低くなるという売り文句は、結局、国民より政治家や裁判所が利用するものなのだ。(談)
リチャード・ディーター(Richard Dieter)
死刑情報センター(DPIC)エグゼクティブディレクター。ワシントンに本拠を置く、米国随一の死刑問題研究センターである非営利組織、Death Penalty Information Center(DPIC。死刑情報センター)の実質的な所長。カトリック法律大学准教授を兼務。ジョージタウン大学法律大学院を優等で修了、メリーランド州、コロンビア特別区で弁護士の資格も有する。1992年に現職に就くまでは、さまざまな人権問題関連の活動にかかわってきた。死刑問題の第一人者で、議会証言の場に立つことも多い。
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