自ら食べた駅弁の味をお客に伝える三浦由紀江さん=さいたま市のJR大宮駅
JR大宮駅(さいたま市)の駅弁店で働く三浦由紀江さん(54)は「カリスマ販売員」と呼ばれる。11年前に主婦からアルバイト店員になって以来、持ち前の明るさを生かして担当した店の売り上げを軒並み伸ばしてきた。「主婦感覚」と「会話するような親しみやすい接客」を大切にしている。
「私、これ食べてみたんですけど、ピリ辛でとってもおいしいんですよ」
JR大宮駅の売店「旨囲門(うまいもん)」で、駅弁選びに迷っている老夫婦を見かけた三浦さんは、笑顔ですかさず声をかけた。勧めたのは、新発売の牛肉弁当。「悩んでいるお客様のタイプを見極めたうえで、絶妙なタイミングと距離感で声をかけるのが大事なんです」と話す。
大学生だった21歳の時に学生結婚。就職希望もあったが、3人の子に恵まれたこともあって23年間、専業主婦だった。転機は97年の春。大学生の娘に「外で働いてみたら」と求人広告を渡され、手軽さから東京都台東区の自宅に近いJR上野駅の駅弁販売店で、アルバイトを始めた。
店頭では、実際に弁当を食べた感想などを一つ一つ客に伝えてみた。有名弁当は名前で売れるが、無名の駅弁を売るには、その魅力を知ってもらう説明が必要だ。すると、弁当が次々に売れていった。
3年後、1日100万円を売り上げる上野駅一番の店の店長に昇進。05年に、東日本のJRの駅で売られる駅弁の製造・販売を担うNRE(日本レストランエンタプライズ)社の正社員になった。
昨春にはJR大宮駅の営業所長として6店を任され、前年比5千万円増、10億円近い年間売り上げを達成。今も毎日店頭に立つ。JR東日本の関係者の間では知られた存在で、上司も「彼女の前向きな性格が、周りにも刺激になっている」と評価する。