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【断 中村文則】無期刑の無理解
このニュースのトピックス:迫る裁判員制度
無期懲役という刑は、色々誤解がある。仮釈放で十数年で出てくる、なんて言葉をよく聞くが、実際はそんな簡単に出てこられるものではない。
平成18年、無期刑受刑者で新たに仮釈放になったのは3人。その平均は約25年ということだ。だがこういう情報も、無期懲役を語る上で正確ではない。なぜならそれは「仮釈放が認められ、出てきた人」の平均年数であって、それは無期懲役そのものの平均にはならない。40年以上、50年以上、そのまま獄死の場合もある。
ちなみに外国にある「終身刑」も、よく誤解される。名前は「終身刑」であるが、多くが仮釈放が認められている。仮釈放のない終身刑を採用している国は、意外にもそれほど多くない。
なぜ無期懲役が十数年で出られる、という言葉が広まっているのだろう。刑期が10年経てば仮釈放を許可できると法にあるが、過剰な表現に走りがちなテレビ報道に加え、無期懲役の実情が社会に詳しく知らされず、年数が曖昧(あいまい)な性質を帯びていることも大きい。
無期懲役と判決が出た裁判は国民に開かれているが、その後の無期懲役の運営に関しては、それほど開かれていない。多くの国民は無期懲役の内実も知らないまま、裁判員制度を迎える。これで本当に大丈夫だろうか。
僕は、刑務所がどういうところか、学校で教える必要があると思っている。受刑者の現状と償いの話を、学校で聞かせることも必要だと思う。刑罰がベールに包まれていれば、それは抑止としても成り立ち難い。(作家)