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【萬物相】ロシアに貸したお金

 1896年6月、閔泳煥(ミン・ヨンファン)は朝鮮王朝の特使として、ロシア皇帝ニコライ2世の戴冠式に出席した。その懐には「借款300万円(当時の通貨)を供与してほしい」という高宗王の親書を携えていた。当時の朝鮮王朝は困窮の一途をたどっていた。朝鮮王朝は1882年、日本から17万円を借りて以来、10年余りにわたって日本から数百万円もの金を借りていた。そして乙未事変(閔妃殺害事件)を受けて、1896年2月高宗王がロシア公使館に避難した「俄館播遷」の後、朝鮮王朝は日本に代わってロシアを頼みの綱にしようとしたのだ。

 これに対しロシア側は「朝鮮の経済状態をまず確かめた上で決めたい」と言い、借款の求めを拒絶した。さらに1899年にも、「朝鮮国内の鉱山の開発権と引き換えに、500万ルーブルを貸してあげよう」というマティーニン駐韓大使の提案を受け入れなかった。シベリアに金やその他の鉱物が数多くあるのに、わざわざ朝鮮にまで行って採掘を行う理由がない、というのがその理由だった。

 それから約90年後の1991年、当時のソ連は盧泰愚(ノ・テウ)政権下の韓国から、14億7000万ドル(現在の為替レートで約1766億8000万円)の金を借りた。わずか1世紀の間に、両国の地位は逆転したのだ。そして金を借りた直後にソ連は崩壊した。旧ソ連を引き継いだロシアは経済が疲弊し、モラトリアム(支払い猶予)状態に陥った。その後もロシアの経済状態は一向に良くならず、金泳三(キム・ヨンサム)政権下で装甲車や軍用ヘリコプターなどの現物で返済したのみだ。それまでに貸した金は、元金と利息を合わせて計22億4000万ドル(約2692億3000万円)にまで膨れ上がった。

 韓国は2003年、ロシアに提供した借款のうち6億6000万ドル(約793億2500万円)を帳消しにすることで合意した。そして残る15億8000万ドル(約1899億円)のうち2億5000万ドル(約300億 5000万円)は03年から06年までに現物で償還し、13億3000万ドル(約1598億5000万円)は今年から2025年までに現金で返済することとした。その返済開始日は6月1日に迫っている。だがロシアからは、「現金ではなく兵器で現物返済したい」という話が出ているという。

 韓国は借款の一部を帳消しにし、償還の期限を延期してあげたにもかかわらず、ロシアから感謝の言葉を聞いていない。それどころかロシアは「もうちょっと融通を利かせろ」と悪態をついてもいる。金を貸すに当たっては、相手に返す意思があるのか見極めなければならない。たとえ十分な金額が戻ってこなかったとしても、後にはるかに大きなメリットを享受するか、せめて感謝の言葉一つあってしかるべきだ。貸した金を返さないということだけで関係が悪化するようなことはあってはならない。ロシアと良好な関係を築いていけるよう、借款問題はうまく処理していかねばならない。

イ・ジュン論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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