南極海での調査捕鯨で、水産庁は海上保安官による捕鯨船団の乗船警備を今年度は見送る方針を固めた。乗船警備は米国のシー・シェパード(SS)など反捕鯨団体の妨害活動をけん制するため、水産庁の要請で海上保安庁が昨年度、初めて実施した。SSによる不法行為を記録するなど成果を上げたが、妨害活動自体は阻止できなかった。両庁は保安官の乗船に代わる警備方法を検討している。
関係者によると、今年度の調査捕鯨船団は近く出航する見込み。海保は乗船警備に向け派遣要員を既に選定済みだが、水産庁は派遣要請を見送る考えだ。
南極海の調査捕鯨は、水産庁が財団法人・日本鯨類研究所に委託している。07年度は母船「日新丸」など6隻の船団が11月12、18日に出航した。領海外で巡視船艇以外の船舶を保安官が警備したのは、92年のプルトニウム輸送船「あかつき丸」以来、2回目だった。
SSは薬品入りの瓶を投げ込んだり、捕鯨船に乗り移るなどの妨害活動を展開。このため、クロミンククジラは捕獲目標の6割、ナガスクジラはゼロにとどまるなど影響が出た。また警告弾を投げる保安官の姿が報道機関に撮影され、世界中に配信された。
関係者は「反捕鯨団体の狙いは目立つこと。海上保安官の存在がかえって捕鯨のイメージ悪化に利用される恐れがある」と分析する。また「保安官が乗船しても、必ずしも抑止効果を期待できないことが昨年の経験から分かった」との指摘も出ている。
毎日新聞 2008年11月14日 東京朝刊