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「金融無知」が招いた通貨オプション損失(下)

◆知らずに契約した企業

 KIKO契約を結んだ輸出中小企業もデリバティブ商品に無知だったことには変わりなかった。「手数料なし」という銀行の販促に心が傾き、為替ヘッジに手数料が必要な先物為替取引の代わりにKIKO契約を結んだ企業も多かった。「世の中にタダのものなどない」としっかりチェックするどころか、銀行が勧める通りに契約を結んだのだった。

 進んだデリバティブ商品であるにもかかわらず、営業は完全に従来方式だった。中小企業D社は銀行から無担保で100億ウォン(約7億6000万円)を借り入れた。銀行の支店長からは「為替ヘッジに役立つ商品が出たので、無担保融資の代わりにウチの方も助けてほしい」と言われ、KIKO契約を結んだところ不覚を取った。契約条件や商品構造を細かくチェックせず、「信用できる銀行が出す商品だから大丈夫だろう」という気持ちで契約したのだという。

 銀行がKIKO契約の見返りとして、融資の返済期限を繰り延べるという条件を示し、あれこれ考えずに契約した企業もあった。今月2日にソウル市の中小企業中央会大会議室で開かれた被害者対策会議で、ある出席者は「銀行がいったいどんな気持ちで優良顧客である中小企業をひどい目に遭わせたのか分からない」と怒りをぶちまけた。

◆知らずに放置した政府

 預金や投資ファンドなど不特定多数に販売される金融商品は通常、金融監督当局の承認を受けなければならない。KIKOも事実上、多くの中小企業を対象に銀行窓口で一般商品のように販売されており、企業は安全な為替ヘッジ商品だと認識して契約を結んだケースが多かった。

 しかし、KIKOは金融当局のスクリーン(点検)手続きや承認を受けず、銀行が外国モデルを持ち込んで販売していたことが分かっている。KIKOは銀行と企業が1対1で契約を結ぶプライベート商品で、市場外のデリバティブ商品に当たるため、事前承認や事後報告は必要ないという理由からだった。

 政府部内では、姜万洙(カン・マンス)企画財政部長官が今月4日に銀行を批判したことで初めてKIKO問題が取り上げられた。姜長官は国会で「KIKOは隠されていた問題であり、誰も知らなかった」と指摘した。

 金融委員会はウォン急落でKIKO問題が深刻化して以降も「監督対象ではなく、銀行と企業のプライベート取引なので関与すべきことではない」と放置していたが、中小企業の黒字倒産が懸念される段になって遅ればせながら支援案を示した。

姜京希(カン・ギョンヒ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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