【社説】危機説よりも政府の対応能力の方が問題
4日のソウル外国為替市場でウォンは1ドル=1129ウォンから一気に19.5ウォン値を上げた。前日19ポイント以上値上がりした株価は、この日は小康状態だった。ここ数日続いたウォンと株の同時大幅安が沈静化したのだ。「9月金融危機説」でパニック状態にあった韓国国内の金融市場が落ち着きを取り戻したようだ。
8月末現在の韓国の外貨準備高は2432億ドル(約25兆9000億円)。ところが「9月に満期が訪れるおよそ67億ドル(約7140億円)の外国人保有債権の償還ができない可能性があり、そのため金融危機が到来する」という話が広まっている。しかし金融危機などはどう考えてもあり得ない。つまり最初からデマに過ぎなかったのだ。
このようなレベルのデマに韓国の金融市場が動揺するのは、成長率、物価、雇用、国際収支などさまざまな側面における韓国経済の基礎体力が大きく弱まったことに原因がある。政府のリスク管理や危機対応は常に後手に回り、政策も成長志向なのか物価安定志向なのか立場が明確でない。そのため市場の信頼が得られず、事態はさらに深刻化した。
債券市場を中心に「9月危機説」が広まったのは、今年5月から6月にかけて。このうわさに対して韓国政府は「根拠のないデマ」と口先で対応するばかりで、市場の不安を払拭するための積極的な行動は取らなかった。8月には株価が1400台にまで落ち込み、為替は一気に77ウォンもウォン安に振れた。それでも政府は手をこまねいて見ているだけだった。今月に入って株安とウォン安の勢いが止まらない状況にあっても、政府は経済金融状況点検会議を開催するとかしないとか、常に後手の対応に追われた。その結果、狂牛病(牛海綿状脳症〈BSE〉)デマのような騒動が再び起こる一歩手前となったのだ。ところがこれほどの騒ぎを起こしておきながら、政府として学んだことは何もなかった。
このような政府では誰が金融政策の責任者なのかさえさっぱり分からない。政府の組織改革で金融政策は金融委員会が責任を持つことになったが、国際金融と為替政策は企画財政部の所管となっている。つまり今回のように為替と株がお互いに影響を及ぼしあって動く事態となれば、誰が中心となって状況に対応するのか明確ではない。危機説よりも危機説に何の対応も取れない政府の危機対応能力の方に、より大きな問題があるということだ。
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