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【コラム】「9月危機」よりも恐ろしい本当の危機(上)

 「9月危機説」騒動のきかっけとなったのは英国のある新聞報道だった。権威を誇る同紙は、韓国が「暗黒の9月」に向かっていると報じ、われわれを驚愕させた。典型的な扇動報道だったが、このような記事に当惑するわれわれの立場に悔しさを感じるばかりだ。もしかすると海外の投資家たちの韓国に対する見方を反映しているのではないか、と恐れさえ感じる。

 大韓民国の国民は「危機」という言葉にトラウマを持っている。10年前のアジア通貨危機の記憶が生々しいのか、危機という言葉を聞くだけで震えがとまらない。「9月危機説」が猛威を振るったのもそのためだろう。そんなことはあり得ないとはいうが、10年前の記憶がよみがえり、どうしてもぞっとするのだ。

 もちろん「9月危機説」は最初から虚構だった。詳しく見てみると、論理自体が破綻していて話にならないほどだ。われわれは根拠も実態もないデマでここ数週間大騒ぎしている。

 危機説は外国人が投資した債権の満期が9月に集中し、多額の外貨が韓国から逃げ出すという仮説から始まった。この額はわずか67億ドル(約7140億円)だ。政府の外貨準備高であるおよそ2400億ドル(約26兆円)に比べるとかなり小額だ。この程度のドル流出で崩壊するほど、韓国経済はぜい弱ではない。

 断言するが、通貨危機は短期間で起こるものではない。株価や為替の乱高下などさまざまな紆余曲折はあるだろうが、少なくとも9月に危機はやってこない。もし10年前に国際通貨基金(IMF)から緊急支援を受けたときのような事態を心配しているのなら、当分はそのような心配は無用だ、と明確にしておきたい。

 しかし安心はできない。危機にもさまざまな種類のものがあり、また満期は常に訪れているからだ。中長期的な観点へとスパンを広げてみれば、あちこちに危機の要因が存在していることが分かる。

 数カ月後を考えてみると、最も心配されるのが中小建設会社の経営難だ。増える一方の家計負債が一気に延滞する可能性もあり、また経常収支の赤字も心配される。

朴正薫(パク・ジョンフン)経済部長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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