Print this Post Article Lists Back

「わい曲教科書」反対市民運動の司令塔、俵義文氏

 市民団体「子供と教科書の全国ネット21」の事務局長をしている俵義文氏(60)は、激しい戦いが展開されている“教科書戦争”の日本市民軍陣営の司令塔だ。彼は昨年の春、右翼グループ「新しい教科書を作る会」が宣戦布告して以来、わい曲された歴史教科書の学校進出を阻止するため、市民運動を先導している。

 「わい曲教科書の採択を事実上“0”にするのが我々の目標です」

 記者はこれまで1年の間に5回程彼に会ったが、今回のように言葉と表情に余裕が感じられたのは初めてだ。栃木県をはじめとする日本全域で、わい曲教科書の採択を拒否する動きが拡散しているからなのだろう。

 俵氏は教科書運動の聖地と呼ばれている「子供・・・ネット21」の10坪余りの事務所で記者を迎えた。5人のボランティアが忙しく動き回っており、壁にピカソの「ゲルニカ」の模写と、韓国の挺身隊(従軍慰安婦)対策委員会のカレンダーがかかっているのが目を引いた。

-8月15日の採択締め切りをひかえ、教科書戦争も中盤を迎えようとしているが。

▲「現在までは我々が善戦している。当初心配していた程“新しい教科書を作る会”の陣営が成功できずにいる。これまで日本全国の地方団体のうち、20%程度の採択結果が確認されたが、その中で問題の教科書を採択するという最終決定を下ろした所はひとつもない」

-栃木県の下都賀地区はわい曲の教科書を採択していたが、変更される兆しが見られるようだが。

▲「25日に行われる教科書採択協議会で変更される可能性が高いと見ている。一部の教育委員が無理に問題の教科書を採択しようとしたが、栃木県の市民が強く反対した。わい曲された教科書を子供に学ばせる訳にはいかないと母親達が立ち上がった」

-わい曲教科書の反対運動が成果を得た理由は?          

▲「右翼陣営の“製品”が余りにも酷いものだったから(笑)。内容を読んでみるとこのような事は教科書に書いてはならぬことだと認めざるを得な「。日本の加害事実を隠蔽し、戦争を美化する“危険な教科書”に他ならない。このような事実を広める市民レベルの運動が日本全域に拡散したお陰だ」

-過去にも幾度か教科書問題があったが、その時と違う点は?

▲「市民が運動の中心になっているという点だ。1980年代の教科書闘争の時は労働組合が中心だった。今回はいたる所で自生的な組織が作られ、一般市民が一から学びながら運動を行っている」

-素人の「アマチュア市民」達が乗り出したことにどんな意味があるのか?

▲「今年1~6月各地で開かれた“わい曲反対市民集会”は我々が把握しているだけでも500回以上にのぼる。過去の教科書問題の時にはなかったことだ。文字通り、“草の根”運動が繰り広げられている」

-日本社会の総体的保守化を懸念しているのが一般的な見方だが。

▲「私は必ずしもそうであるとは思わない。確かに大衆媒体や知識人層は保守化の傾向が濃厚ではあるし、それが表面的に目立っているので、日本全体が保守化されているようにも見える。しかし日本国民を全体的に見ると、総て保守化されているのではないと思う」

-「新しい歴史教科書を作る会」側はわい曲教科書を10%以上の中学校で採択させるという目標を立てているが。

▲「希望事項であるだけだ。多分不可能だろう。我々は問題の教科書の採択率を0に近付かせ、枯死させることを目標にしている。今のような傾向なら目標の『事実上0%』も不可能ではない。私立学校はわい曲教科書を採択している学校が少しあるが、全体の93%を占める公立中学校では我々の目標が実現される可能性が十分ある」

-自信があるか?

▲「問題は東京だ。来週から始まる東京各地区の採択戦が教科書戦争の最終戦であり、勝負所になると見られる。東京にはわい曲教科書を採択する動きが活発な危険地域が数カ所ある。更に石原慎太郎東京知事が直接動いている。彼が先頭に立ってわい曲教科書が採択するよう、各地域の教育委員会に圧力を加えている」

-「新しい歴史教科書を作る会」の勢いは?

▲「未だに活発だ。組織・資金力が非常に強い所だ。財界が彼らを支援している上、会費を出している会員が1万人を超えている。顧問会員は年10万円、法人会員は30万円の会費を出しているという。教科書問題を機に日本内の各分野の右翼派勢力が総結集され、『統一戦線』を形成しているといえる。過去にはなかったことだ」

-右翼側の脅迫はなかったか?

▲「脅迫電話やファックスは常にある。先程も電話で怒鳴るだけ怒鳴って一方的に電話を切ってしまった人がいた。『お前は日本人ではない。どの国の×か』とこんな感じだ」

-物理的暴力は?

▲「講演会や市民集会などの会場に右翼の街宣車が来て、拡声器で騒ぎ立て妨害することがたびたびある。だが幸いこの事務所が襲撃されたことはない」

-怖くないか。

▲「だが、市民運動レベルで見れば我々の方が圧倒的に強い。先頃秋田で開かれた右翼主催の講演会で、講師として招かれた「新しい…つくる会」の西尾幹二会長が、たった30人の聴衆しか集まらなかったのを見て激怒したそうだ。その30人のうち10人くらいは、偵察目的で送り出したこちら側の人間だった(笑)」

-日本の新聞にわい曲教科書の反対広告を出して話題になった。広告費もばかにならないはずだが。

▲「全額募金で充てている。初めは不安もあったが、市民の反響が大きかった。2カ月でおよそ3000人の個人・250の団体から、約1100万円もの募金が送られてきた。更に40万円ほど集めれば、今までの広告料は一応カバーできる。それでも最後の戦いのためにはまだまだ資金が必要。日本の郵便口座番号は00110-8-28666だ」

-教科書問題は今や国際的なイシューとなったが。

▲「韓国や中国だけでなく、米国・欧州などでも大きな関心を寄せている。今日も午前中にフランスのジャーナリストたちが訪れ、取材していった。来週には米国の学者の訪問や雑誌のインタビューも予定されている。先頃、世界各国の学者およそ100人がわい曲教科書に反対する声明を発表している。こうした国際世論に耳を傾けないならば、日本は孤立するだろう」

東京=朴正薫(パク・チョンフン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る