Print this Post Article Lists Back

ヒマラヤシダの「親日」

 30年以上ある大学博物館の象徴の木となってきたヒマラヤシダが今月12日に切り取られた。

 某地元紙は「3月末、全北(チョンブク)大学博物館を訪問した兪弘濬(ユ・ホンジュン)文化財庁長が『ヒマラヤシダは朴正熙(パク・ジョンヒ)政権時代の1970年代、大規模に植えられた代表的な親日の残骸であるため、抜いてしまった方がよい』と勧めたため」と報道した。

 反面、全北大学側は「木が博物館を隠し、以前から抜こうと思っていた。兪庁長の発言とは関係ない」とし、兪庁長は「(どのような話をしたのか)記憶にない」とした。

 ヒマラヤシダはヒマラヤ北西部が原産地で、あまりにも形が美しく“世界3大美樹”のひとつに挙げられる木だ。イエスがかけられた十字架の柱がこの木で作られたという話も伝えられている。シム・フンの小説『常緑樹』が書かれた頃の1930年代半ば、韓国の代表的な常緑樹がこのヒマラヤシダだった。

 現在も世界で公園を飾る木や街路樹として人気のあるヒマラヤシダが“親日の残骸”という論争に巻き込まれたのだ。兪庁長をはじめとした政府関係者らが親日派と責め立ててきた朴元大統領時代に植えられたという事実が原罪として作用したのだ。

 マンドゥン山を緑にするため、木を植えることを国策事業として推し進めてきた朴政権時代、日本から輸入した3種の木であるカラマツ、ヒノキ、スギも、このような区分法に従えば“親日の残骸”に属すことになる。

 歌手の趙英男(チョ・ヨンナム)氏は日本の新聞とのインタビューで、「独島問題の対応で日本が一段上」と発言し、ネチズンから「親日売国奴」と罵倒され、結局13年間務めてきた公営放送の番組司会を降板するに至った。

 「趙氏の発言内容に比べ反応が過敏ではないか」という論旨を述べるだけで「あなたは大韓民国の国民か」と攻撃される。一旦親日派の烙印を押されれば、その人の近くに行くだけで「親日」になり、その人が手を加えた物まで「親日残滓」になる世の中だ。

 どういうわけで木1本、草ひとつまで親日、反日に区分する世の中になったのだろうか。国民を政権のコード(価値観・意見)によって「親」、「反」に分け近づけたり遠ざけたりする冷酷な世相だが、木は木で、花は花と見る余裕まで消えたのだろうか。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る