Loading...

2008年11月12日

11・12大阪高裁判決報告会


大阪高裁判決(2008年10月31日)

転送歓迎!


★11・12「大江・岩波沖縄戦裁判」大阪高裁判決報告会★

○日 時:2008年11月12日(水) 開始:18時30分 終了予定:21時
○場 所:文京区民センター 3A会議室 ○資料代:500円

○主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
     大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会(大阪)
     沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会(沖縄)

●弁護団からの報告

●岩波書店からの発言 岡本厚さん(訴訟担当)

●判決を読んで 中村政則さん(一橋大学名誉教授)

●大阪から 平井美津子さん(大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会)


●沖縄戦首都圏の会から 今後の取り組みについて

○日時:2008年11月12日(水)開始:18時30分 終了予定:21時
○資料代:500円
○場所:文京区民センター 3A会議室
 地下鉄都営三田線/大江戸線春日駅から徒歩0分(A2出口直上)
 丸の内線/南北線後楽園駅から徒歩3分 JR総武線/水道橋駅から徒歩10分

◆予約は不要です。当日会場に直接お越しください。

◇予告◇
★<沖縄戦首都圏の会>連続講座第10回国連でも追及された日本の教科書問題(仮)
【講師】前田朗さん(東京造形大学教授)
2008年12月12日(金) 18時30分 文京区民センター


大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
(略称:沖縄戦首都圏の会)
連絡先:〒101-0051 千代田区神田神保町3-2 千代田区労協気付
TEL 03-3264-2905 FAX03-3264-2906
http://okinawasen.blogspot.com/

2008年11月5日

大阪高裁判決についての三団体共同声明

  1. 2008年10月31日、大阪高等裁判所第4民事部(小田耕治裁判長)は、平成20年(ネ)第1226号 出版停止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成17年(ワ)第7696号)、いわゆる大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判控訴審で、「本件各控訴および各控訴人らの当審各拡張請求をいずれも棄却する。当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする」との判決を言い渡した。

  2. 大阪高裁判決は基本的に原審を維持し、ふたたび、沖縄戦の真実を歪曲した控訴人(原告)らの主張の誤りを明確にしたばかりでなく、控訴人らの主張の信用性を立証するための裏付け調査等がなされた形跡もないことなど、きわめて問題だと指摘し,控訴人ら弁護士の立証活動が科学的、実証的なものではなく,いい加減なものであったと指摘したものと言える。

  3. それにかかわって、控訴人梅澤が「自決するな」と言ったという主張を明確に否定し、住民に玉砕(自決)を求める方針を決して変更しなかったことも認定したことは重要である。さらに控訴人らが持ち出した宮平秀幸新証言を虚言と断じ、それを擁護し補強を試みた藤岡信勝意見書なども採用できないと断言したことも重要である。

  4. 戦隊長梅澤・赤松の玉砕(自決)命令については、「伝達経路が判然としない」という原審を訂正し、「住民への直接命令」と狭く限定したうえで、証拠上からそれを認定するのは無理があるとした。本来ならば、事実上の戒厳令下の「合囲地境」にあった慶良間列島において、命令の伝達経路は明確にされており、隊長命令なしに集団死が起こり得なかったことを判示すべきだったと考える。

  5. しかし重要なことは、もっとも狭い意味での隊長命令の存在を認定しなかったからといって、それが、隊長命令がなかったことを意味するものでもなく、総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もありうると、高裁判決が明言していることである。

  6. そのさい、国家機関としての裁判所は本訴訟の主題である名誉毀損等の成否にかかわる限りで歴史事実についての判断をするべきであって、本来、歴史的事実の認定は歴史研究の場において研究し論議を蓄積していくべきものであるとしたのは妥当な判断であり、それは控訴人らが集団死についての軍命の存在を否定することを裁判所に求め、それをもって教科書を書き換え、国民の歴史認識を歪曲しようとしたことの不当性をいっそう明らかにしたものといえる。

  7. 高裁判決は、新たに、日本国憲法が保障する言論表現の自由を最大限に尊重することが民主主義社会の基盤であるという立場から、出版差し止めが成立するための条件を明確にし、それにもとづいて出版差し止め請求を棄却した。これは憲法が定める権利の保障をいっそうすすめるうえで貴重な判断である。とりわけ公務員に関すること、いいかえれば国家権力の行為についての自由な言論の保障の必要性が高いことを明確にしたことは重要である。この判断に従うならば、国家権力を構成する軍隊の行為について教科書においても自由な言論が保障されるべきである。教科書記述を政府が認める特定の枠のなかにとじこめようとする教科書検定、とりわけ今回の沖縄戦検定の不当性は、この点からもいっそう明らかになった。

  8. よって文部科学省に対し、沖縄戦に関する2006年度検定意見をただちに撤回し、「集団自決」における軍の強制・命令の記述の復活を含め、記述の再訂正による改善を直ちに認めることを強く要求する。

  9. 控訴人らは最高裁に上告するとのことであるが、最高裁に対し、すみやかに上告を棄却することを求める。

2008年11月5日

大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会
沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会
大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
連絡先:大阪市北区芝田2-4-2牛丸ビル3階「うずみ火」編集部
電話・FAX 06-6453-2448

2008年11月2日

大阪高裁判決:大江健三郎氏のコメント

ベルリン自由大学での講義のためにベルリンに滞在しており、判決を直接聞くことができませんでした。いま、私たちの主張が認められたことを喜びます。

私が38年前にこの『沖縄ノート』を書いたのは、日本の近代化の歴史において、沖縄の人々が荷わされた多様な犠牲を認識し、その責任をあきらかに自覚するために、でした。沖縄戦で渡嘉敷島・座間味島で700人の島民が、軍の関与によって(私はそれを、次つぎに示された新しい証言をつうじて限りなく強制に近い関与と考えています)集団死をとげたことは、沖縄の人々の犠牲の典型です。それを本土の私らはよく記憶しているか、それを自分をふくめ同時代の日本人に問いかける仕方で、私はこの本を書きました。

私のこの裁判に向けての基本態度は、いまも読み続けられている『沖縄ノート』を守る、という一作家のねがいです。原告側は、裁判の政治的目的を明言しています。それは「国に殉ずる死」「美しい尊厳死」と、この悲惨な犠牲を言いくるめ、ナショナルな氣運を復興させることです。

私はそれと戦うことを、もう残り少ない人生の時、また作家としての仕事の、中心におく所存です。


(2008年10月31日)

大阪高裁(第二審)も勝訴!!


琉球新報PDF版速報(523KB)


「大江・岩波沖縄戦裁判」の控訴審判決で、大阪高裁(小田耕治裁判長)は10月31日午後2時開廷し、原告の控訴をいずれも棄却しました。

判決要旨

アジア・太平洋戦争の末期、沖縄戦で慶良間列島の座間味島、渡嘉敷島で起きた「強制集団死」(「集団自決」)をめぐり、座間味島と渡嘉敷島に当時駐屯していた旧日本軍の元戦隊長の梅澤裕氏と故赤松嘉次氏の遺族が、作家の大江健三郎氏と岩波書店に「沖縄ノート」などの出版の差し止めと謝罪広告の掲載、慰謝料を求めていた裁判の控訴審で、大阪高裁は大阪地裁(第一審)判決を支持し、原告らの請求をいずれも棄却しました。

被告席には岩波書店関係者、大江健三郎氏はドイツ出張中のため欠席。原告席には梅澤裕氏らも出席。
小田耕治裁判長は「原告各控訴を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」と述べ、午後2時01分に閉廷しました。

判決を前に65の傍聴券に281人が並びました。

原告側は上告の予定。

ご支援ありがとうございます。



「大江・岩波沖縄戦裁判」大阪高裁判決報告集会
2008年11月12日(水) 18時30分 文京区民センター


【関連報道】リンク切れの場合あり

隊長命令否定せず
岩波訴訟、梅澤氏側の訴え棄却

琉球新報 -2008年10月31日
【大阪】沖縄戦中、座間味・渡嘉敷両島で起きた「集団自決」(強制集団死)をめぐり、両島に駐留していた日本軍の戦隊長が住民に自決を命じたとの記述は誤りだとして、座間味島元戦隊長の梅澤裕氏や、渡嘉敷島戦隊長の故赤松嘉次氏の弟の秀一氏が「沖縄ノート」著者の作家 ...

岩波・大江裁判控訴審の争点表
琉球新報 -2008年10月30日


集団自決訴訟の判決要旨
大阪高裁判決

共同通信 -2008年10月31日
沖縄集団自決訴訟の31日の大阪高裁判決の要旨は次の通り。
当裁判所も1審同様、梅沢元守備隊長らの請求はいずれも理由がないと判断する。
「太平洋戦争」の記述は梅沢元隊長、「沖縄ノート」の記述は梅沢元隊長と赤松元隊長の社会的評価を低下させる内容だが、高度な ...

二審も「軍の深い関与」認める=大江さん著書の名誉棄損否定-沖縄戦集団自決訴訟
時事通信 -2008年10月31日
太平洋戦争末期の沖縄戦で住民に集団自決を命じたとする虚偽の記述で名誉を傷つけられたとして、元日本軍守備隊長らが「沖縄ノート」の著者大江健三郎さん(73)と岩波書店を相手に、出版差し止めや慰謝料などを求めた訴訟の控訴審判決が31日、大阪高裁であり、小田 ...

2審も「軍が深く関与」
集団自決、大江さんら勝訴

共同通信 -2008年10月31日
太平洋戦争末期の沖縄戦で旧日本軍が「集団自決」を命じたとする作家大江健三郎さん(73)の「沖縄ノート」などの記述をめぐり、沖縄・慶良間諸島の当時の守備隊長らが名誉を傷つけられたとして、岩波書店と大江さんに出版差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪 ...

「沖縄ノート」差し止め訴訟
「真実でないことが明白になったとまでいえず」

MSN産経ニュース2008年10月31日
大戦末期に起きた沖縄の集団自決をめぐるノーベル賞作家、大江健三郎氏(73)の著書『沖縄ノート』などの出版差し止め訴訟で31日、旧日本軍の元戦隊長と遺族の請求を1審に続いて退けた大阪高裁(小田耕治裁判長)は、判決理由で、両元隊長が住民に直接自決命令を発 ...

沖縄ノート訴訟
史実と向き合う言論の勝利だ

愛媛新聞 -2008年11月1日
「集団自決は日本軍が深くかかわっていることは否定できず、総体としての軍の強制ないし命令と評価する見解もあり得る」―おとといの大阪高裁判決だ。
大江健三郎さんの「沖縄ノート」には、太平洋戦争末期の沖縄戦で旧日本軍が住民に「集団自決」を命じたとする記述がある ...

「真実相当」と認定/「集団自決」訴訟
沖縄タイムス -2008年11月1日
「集団自決」訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(小田耕治裁判長)は三十一日、「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の関与を認め、戦隊長による関与についても「十分に推認できる」とした一審・大阪地裁判決を支持し、元戦隊長側の控訴を棄却した。 ...

[控訴審判決]
沖縄タイムス -> 2008年11月1日
沖縄戦の際、慶良間諸島で起きた「集団自決(強制集団死)」をめぐる裁判の控訴審判決で、大阪高裁の小田耕治裁判長は原告の主張を退け、控訴を棄却した。
今年三月の大阪地裁判決に続いて再び、元戦隊長側敗訴の判決が言い渡されたことになる。 小田裁判長は「最も狭い ...

「集団自決」沖縄戦訴訟
しんぶん赤旗 -2008年10月31日
沖縄戦の「集団自決」での軍の命令を否定する元日本軍の守備隊長らが、大江健三郎氏(73)の著書『沖縄ノート』などで「自決を命じたと書かれ名誉を傷つけられた」とし、同氏と出版元の岩波書店を相手に出版差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(小田耕治 ...

沖縄戦集団自決・損賠訴訟:沖縄ノート控訴審
出版差し止めに基準、控訴棄却

毎日新聞 -2008年10月31日
ノーベル賞作家、大江健三郎さん(73)の著作「沖縄ノート」などで、沖縄戦で集団自決を命令したと虚偽の記述をされ名誉を傷つけられたとして、旧日本軍の戦隊長らが大江さんと出版元の岩波書店に、出版差し止めと慰謝料3000万円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決...

沖縄ノート訴訟、集団自決に軍関与を大阪高裁も認定
読売新聞 -2008年10月31日
沖縄戦で住民に集団自決を命じたと、作家・大江健三郎さん(73)の著書「沖縄ノート」などで虚偽の記述をされ、名誉を傷つけられたとして、旧日本軍の元少佐らが、大江さんと発行元の岩波書店(東京)に出版差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決が31日、大阪高裁で ...

「沖縄ノート」差し止め訴訟
上告審では真正面から判断を

MSN産経ニュース -2008年10月31日
沖縄集団自決訴訟の控訴審判決で大阪高裁は1審判決と同様、元戦隊長らが集団自決を命じたとする『沖縄ノート』の記述の真実性は否定したものの、著者の大江健三郎氏が真実と信じる相当の理由があったとする「真実相当性」を根拠に原告側の請求を棄却した。 ...

【社説等】
社説:[控訴審判決]
沖縄タイムス-2008年11月1日
沖縄戦の際、慶良間諸島で起きた「集団自決(強制集団死)」をめぐる裁判の控訴審判決で、大阪高裁の小田耕治裁判長は原告の主張を退け、控訴を棄却した。 今年三月の大阪地裁判決に続いて再び、元戦隊長側敗訴の判決が言い渡されたことになる。 小田裁判長は「最も狭い ...

社説:岩波・大江訴訟 県民納得の妥当判決だ
琉球新報-2008年11月1日
沖縄戦時に座間味・渡嘉敷両島で起きた「集団自決」(強制集団死)に旧日本軍はどう関与したかなどをめぐる史実論争に再び司法判断が示された。
 沖縄戦体験者の証言をはじめ歴史研究の積み重ねなどを踏まえた妥当な判決だ。結論を導く筋道が分かりやすい。歴史的事象に対する客観性や普遍性に主眼を置いた解釈、明快な論理展開で言論・出版の自由へ踏み込んだことも特筆される。...

社説:集団自決判決―あの検定の異常さを思う
朝日新聞-2008年11月1日
太平洋戦争末期の沖縄戦で、住民の集団自決に日本軍が深くかかわっていた。そのことが大阪地裁に続いて大阪高裁でも認められた。06年度の教科書検定で、軍のかかわりを軒並み削らせた文部科学省の判断の異常さが改めて浮かび上がる。

社説:沖縄ノート高裁判決 言論の萎縮に警鐘を鳴らした
毎日新聞-2008年11月2日
沖縄戦で住民に集団自決を命じたとの記述で名誉を傷つけられたとして、旧日本軍の戦隊長らが「沖縄ノート」の著者の大江健三郎さんと岩波書店に出版差し止めと慰謝料を求めた裁判で、大阪高裁は原告の主張を退けた1審判決を支持し、控訴を棄却した。 ...

社説:集団自決判決
検定の立場は維持すべきだ

読売新聞 -2008年10月31日
結論は1審判決と変わりはない。しかし、受け止め方によっては、沖縄戦の集団自決をめぐる歴史教科書の記述に、新たな混乱をもたらしかねない判決である。
集団自決を命じたと虚偽の記述をされ名誉を傷つけられたとし、旧日本軍の守備隊長だった元少佐らが、作家の大江 ...

【主張】沖縄集団自決訴訟
判決と歴史の真実は別だ

MSN産経ニュース -2008年10月31日
沖縄戦で旧日本軍の隊長が集団自決を命じたとする大江健三郎氏の著書「沖縄ノート」などの記述をめぐり、大阪高裁も同地裁同様、大江氏側の主張をほぼ全面的に認める判決を言い渡した。 訴訟は、大江氏らが沖縄県渡嘉敷・座間味両島での集団自決は隊長の命令によるものと...

2008年10月31日

10・31大阪高裁判決要旨

原告各控訴を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。

【判断の大要(判決114頁以下)】
当裁判所も,原告同様,控訴人らの各請求は,当審で拡張された分を合めていずれも理由がないものと判断する。
(1)「太平洋戦争」の記述は控訴人梅澤の,「沖縄ノート」の各記述は控訴人梅澤及び赤松大尉の,各社会的評価を低下させる内容のものであったと評価できること,しかし,これらは高度な公共の利害に関する事実に係わり,かつ,もっぱら公益を図る日的のためになされたものと認められること,以上の点は,おおむね原判決が説示するとおりである。
(2)座間味島及び渡嘉敷島の集団自決については,『軍官民共生共死のー体化』の大方針の下で日本軍がこれに深く関わっていることは否定できず,これを総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もあり得る。しかし,控訴人梅澤及ぴ赤松大尉自身が直接住民に対してこれを命令したという事実(最も狭い意味での直接的な隊長命令-控訴人らのいう「無慈悲隊長直接命令説」)に限れぱ,その有無を本件証拠上断定することはできず,本件各記述に真実性の証明があるとはいえない。
(3)集団自決が控訴人梅澤及び赤松大尉の命令によるということは,戦後間もないころから両島で言われてきたもので,本件各書籍出版のころは,梅澤命令説及び赤松命令説は学会の通説ともいえる状況にあった。したがって,本件各記述については,少なくともこれを真実と信ずるについて相当な理由があったと認められる。また,「沖縄ノート」の記述が意見ないし公正なる論評の域を逸脱したとは認められない。したがって,本件各委籍の出版はいずれも不法行為に当たらない。
(4)本件各書籍(「太平洋戦争」はその初版)は,昭和40年代から継続的に出版されてきたものであるところ,その後公刊された資料等により,控訴人梅澤及ぴ赤松大尉の前記のような意味での直接的な自決命令については,その真実性が揺らいだといえるが,本件各記述やその前提とする事実が真実でないことが明白になったとまではいえない。他方,本件各記述によって控訴人らが重大な不利益を受け続けているとは認められない,そして,本件各記述は,歴史的事実に属し日本軍の行動として高度な公共の利害に関する事実に係わり,かつ,もっぱら公益を目的とするものと認められることなどを考えると,出版当時に真実性ないし真実相当性が認められ長く読み継がれている本件各書籍の出版等の継続が,不法行為に当たるとはいえない。(注 この判断の前提となる法律的判断は,後記の抜刷りのとおり)
(5)したがって,控訴人らの本件請求(当審での拡張請求を含む)はいずれも理由がない。
【証拠上の判断】
(1)控訴人梅澤は,昭和20年3月25日本部壕で「決して自決するでない」と命じたなどと主張するが、到底採用できず、助役ら村の幹部が揃って軍に協力するために白決すると申し出て爆薬等の提供を求めたのに対し,求めには応じなかったものの,玉砕方針自体を否定することもなく,ただ「今晩は一応お帰り下さい。お帰り下さい」として帰しただけであると認めるほかはない(判決208頁以下に詳述)。
(2)宮平秀幸は,控訴人梅澤が本部壕で自決してはならないと厳命し,村長が忠魂碑前で住民に解散を命じたのを聞いたなどと供述するが,明らかに虚言であると断じざるを得ず,これを無批判に採用し評価する意見書,報道,雑誌論考等関連証拠も含めて到底採用で寺ない(判決240頁以下に詳述)。
(3)梅澤命令説,赤松命令説が援護法適用のために後から作られたものであるとは認められない。これに関連して,照屋昇雄は,援護法適用のために,赤松大尉に依頼して自決命令を出したことにしてもらい、サインなどを得て命令書(?)をねつ造した旨を話しているが,話の内容は全く信用できず,これに関連する報道,雑誌論考等も含めて到底採用できない(判決189頁以下に詳述。203頁で総合判断。)。
(4)宮村幸延の「証言」と題する親書の作成経緯を,控訴人梅澤は,本件訴訟において意識的に隠しているものと考えざるをえない,証拠上認められるその作成経緯に照らし,「証言」は,家族に見せ納得させるためだけのものだと頼まれて初枝から聞いていた話をもとに作られたものに過ぎず,遺族補償のために梅澤命令がねつ造されたものであることを証するようなものとは評価できない(判決194頁以下に詳述)。
(5)時の経過や人々の関心の所在,本人の意識など状況の客観的な変化等にかんがみると,控訴人らが,本件各書籍の出版等の継続により,その人格権に関して,重大な不利益を受け続けているとは認められない(判決273頁以下に詳述)。
【判断の大要(4)の前提となる法律的判断(判決121頁以下の抜刷り)】       (原判決の説示を引用する形をとっているが,ゴシック部分が当裁判所が新たに判示した部分である。)
『人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷,製本,販売,頒布等の事前差止めは,その出版物が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価,批判等に関するものである場合には,原則として許されず,その衷現内容が真実でないか又はもっぱら公益を図る目的のものでないことが明白であって,かつ,被害者が急大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときに限り,例外的に許される(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁参照)。
 本件では,既に出版され,公表されている書籍の出版等差止めを求めるものであるが、表現の自白,とりわけ公共的事項に関する表現の自由の持つ憲法上の価値の重要性等に艦み,原則として同様に解すべきものである。さらに,本件のように,高度な公共の利害に関する事実に係り,かつ,もっぱら公益を図る目的で出版された書籍について、発刊当時はその記述に真実性や真実相当性が認められ,長年にわたって出版を継続してきたところ,新しい資料の出現によりその真実性等が揺らいだというような場合にあっては,直ちにそれだけで,当該記述を改めない限りそのままの形で当該書籍の出版を継続するここが違法になると解することは相当でない。そうでなければ,著者は、過去の著作物についても常に新しい資料の出現に意を払い,記述の真実性について再考し続けなければならないということになるし,名誉侵害を主張する者は新しい資料の出現毎に争いを蒸し返せることにもなる,著者に対する将来にわたるそのような負担は,結局は言論を萎縮させることにつながるおそれがある。また,特に公共の利答に深く関わる事柄については,本来,事実についてその時点の資料に基づくある主張がなされ,それに対して別の資料や論拠に基づき批判がなされ,更にそこで深められた論点について新たな資料が探索されて再批判が繰り返されるなどして,その時代の大方の意見が形成され,さらにその大方の意見自体が時代を超えて再批判されてゆくというような過程をたどるものであり,そのような過程を保障することこそが民主主義社会の存続の基盤をなすものといえる。特に,公務員に関する事実についてはその必要性が大きい。そうだとすると,仮に後の資料からみて誤りとみなされる主張も,言論の場において無価値なものであるとはいえず,これに対する寛容さこそが,自由な言論の発展を保障するものといえる。したがつて,新しい資料の出現によりある記述の真実性が揺らいだからといって,直ちにそれだけで,当該記述を含む書籍の出版の継続が違法になると解するのは相当でない,もっとも,そのような場合にも,①新たな資料等により当該記述の内容が真実でないことが明白になり,他方で,②当該記述を含む書籍の発行により名誉等を侵害された者がその後も重大な不利益を受け続けているなどの事情があり,③当該書籍をそのまま発行し続けることが,先のような観点や出版の自由などとの関係などを考え合わせたとしても社会的な許容の限度を超えると判断されるような場合があり得るのであって,このような段階に至ったときには,当該書籍の出版をそのまま継続することは,不法行為を構成すると共に,差止めの対象にもなると解するのが相当である。
 そして,本件で問題になっているのは,第2・2(1)アのとおり,太平洋戦争後期に座間味島で第一戦隊長として行動した控訴人梅澤及び渡嘉敷島で第三戦隊長として行動した赤松大尉が,太平洋戦争後期に座間味島,凌嘉敷島の住民に集団白決を命じたか否かであって,控訴人梅渾及び赤訟大尉は日本国憲法下における公務員に相当する地位にあり各記述は高度な公共の利害に係り,後記のようにもっぱら公益を図る目的のものであるから,本件各書籍の出版の差し止め等は,少なくとも,①その表現内容が真実でない…ことが明白であって,かつ,②被害者が重大な不利益を受け続けているときに限って認められると解するのが相当である。』

2008年10月17日

10・30連続講座第9回オーラルヒストリーの力


★10・30「沖縄戦首都圏の会」連続講座第9回>

■オーラルヒストリーの力-住民証言から見える沖縄戦■

○講 師 中村政則さん 一橋大学名誉教授
○日 時:2008年10月30日(木) 開始:18時30分 終了予定:21時
○場 所:文京区民センター 3A会議室 ○資料代:500円
○主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会

大江・岩波沖縄戦裁判は、6月25日に控訴審が始まりましたが、わずか2回の公判で9月9日の口頭弁論にて結審し、10月31日に判決が言い渡されます。

その前夜に近著『昭和の記憶を掘りおこすー沖縄、満州、ヒロシマ、ナガサキの極限状況』(小学館)で、あらためてオーラル・ヒストリーの魅力と可能性を論じ、さらには注意点と限界についても解説された中村政則さんをお招きし、連続講座第9回を開催いたします。

大江・岩波沖縄戦裁判においては、地裁・高裁の審理を通じて、沖縄戦の強制集団死の体験者の証言がきわめて重要な役割を果たしました。体験者の身を切るような証言があってこそ、地裁の勝訴を勝ち取ることができました。

3月の大阪地裁の勝訴につづいて、高裁でも勝利を勝ち取るために、私たちは集会や署名などさまざまな取り組みをしてきました。判決前夜となる本集会に是非ご参加ください。

☆オーラルヒストリーの力-住民証言から見える沖縄戦
講師:中村政則さん(一橋大学名誉教授)
専攻:日本近現代史。
著書:『近代日本地主制研究』(東京大学出版会)
 『昭和の恐慌』(小学館)
 『戦後史と象徴天皇』(岩波書店)
 『経済発展と民主主義』(岩波書店)
 『労働者と農民』(小学館)
 『現代史を学ぶ』(吉川弘文館
 『戦後史』(岩波新書)
 『昭和の記憶を掘りおこすー沖縄、満州、ヒロシマ、ナガサキの極限状況』(小学館)
  他

◇大江・岩波沖縄戦裁判の報告

○日時:2008年10月30日(木)開始:18時30分 終了予定:21時
○資料代:500円
○場所:文京区民センター 3A会議室
 地下鉄都営三田線/大江戸線春日駅から徒歩0分(A2出口直上)
 丸の内線/南北線後楽園駅から徒歩3分 JR総武線/水道橋駅から徒歩10分

◆予約は不要です。当日会場に直接お越しください。

◇予告◇
「大江・岩波沖縄戦裁判」大阪高裁判決報告集会
2008年11月12日(水) 18時30分 文京区民センター

主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
(略称:沖縄戦首都圏の会)
連絡先:〒101-0051 千代田区神田神保町3-2 千代田区労協気付
TEL 03-3264-2905 FAX03-3264-2906
http://okinawasen.blogspot.com/

2008年9月5日

9・26連続講座第8回沖縄戦の史実歪曲を斬る 

転送歓迎!


★9・26「沖縄戦首都圏の会」連続講座第8回>

□□□沖縄戦の史実歪曲を斬る□□□
○講 師 山口剛史さん 琉球大学准教授
○日 時:2008年9月26日(金)
開始:18時30分 終了予定:21時
○場 所:文京区民センター 3A会議室 ○資料代:500円
○主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会

「大江・岩波沖縄戦裁判」の原告側は、第一審敗訴後、雑誌「WiLL」臨時増刊号等で沖縄戦の史実を歪めようと盛んに喧伝しています。このような「史実歪曲」の構造や問題点などを、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」事務局長の山口剛史さんに解説していただきます

☆沖縄戦の史実歪曲を斬る
 講師 山口剛史さん 琉球大学准教授
  「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」事務局長

☆9・9大阪高裁控訴審 第2回口頭弁論報告 事務局より

○日時:2008年9月26日(金)
開始:18時30分 終了予定:21時
○資料代:500円
○場所:文京区民センター 3A会議室
 地下鉄都営三田線/大江戸線春日駅から徒歩0分(A2出口直上)
 丸の内線/南北線後楽園駅から徒歩3分 JR総武線/水道橋駅から徒歩10分
◆予約は不要です。当日会場に直接お越しください。

◇予告◇
連続講座第9回 「オーラルヒストリーの力-住民証言から見える沖縄戦」(仮)
講師:中村政則さん(一橋大学名誉教授)
2008年10月30日(木) 18時30分 文京区民センター

主 催:大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会
(略称:沖縄戦首都圏の会)
連絡先:〒101-0051 千代田区神田神保町3-2 千代田区労協気付
TEL 03-3264-2905 FAX03-3264-2906
http://okinawasen.blogspot.com/