「無借金になるまでの間は、数千億円単位の大きな投資をするつもりは全くない」。ソフトバンクが10月29日に開いた第2四半期決算の説明会。孫正義社長の発言に思わず耳を疑った。
買収をテコに拡大し続けてきた同社にとって、まさかの「M&A(合併・買収)凍結宣言」。だが、「これを公言するのは、僕の人生プランの中でかなりのコミットメントです」と言うだけに、口を滑らせたわけではなさそうだ。
そもそも異例ずくめの決算発表だった。当初予定の11月5日から日程を急遽1週間早め、高速インターネット事業の開始以降、頑なに拒んできた業績予想も営業利益とキャッシュフローを来期分まで開示した。説明会では32分間のうち事業内容に充てたのはわずか3分。残りはすべて財務に充てた。CDO(合成債務担保証券)の損失リスクに関する情報も先回りして公表した。すべては資金繰りに対する不安を払拭するためだ。
米国発の金融市場の混乱は2兆円超の有利子負債を抱えるソフトバンクを直撃した。5年のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は900ベーシスポイントを突破。これは市場で期間5年の社債を発行しようとすれば、金利上乗せ幅は9%になることを意味し、「まるで破綻するかのような勘違いのスプレッド」(孫社長)だ。
強気の支払い交渉で「誤解」
「ソフトバンクが資金回収に必死になっている」。端末メーカーや販売代理店からはこんな声が絶えない。この噂は事実でもあり、誤解でもある。「フリーキャッシュフローの最大化は当然の財務戦略。携帯電話事業の買収後、最初に手をつけたのが支払期日の延長だった」。ソフトバンクの後藤芳光財務部長はこう言い切る。